米国株式・債券の歴史データで退職後の取り崩し率と資産の持続年数を検証した研究(4%ルールの起源)
Determining Withdrawal Rates Using Historical Data
William P. Bengen(1994)『Journal of Financial Planning』
retailinvestor.org経由の再掲載(原文全文PDFスキャン) Financial Planning Association 掲載ページ(アクセス制限により本文未確認)
ひとことで言うと
米国の株式と債券の歴史データを使い、退職後の年間取り崩し率と資産が尽きるまでの年数の関係を検証し、「初年4%+インフレ調整」という取り崩しルールの根拠を示した研究です。
図で読む:この研究は何を比べたか
取り崩し率を3%から5%へ上げると、最短の資産持続年数はどう変わったか
初年3%の取り崩し
検証した全ての退職開始年で資産が50年以上持続
1926年から1976年までの退職開始年ごとに算出したポートフォリオの最短持続年数
初年5%の取り崩し
1960年代後半〜70年代前半の退職開始年で資産が約20年で尽きるケースが出現
最短持続年数が最大30年前後短縮
利益への距離
- 観測された差
-
確認された
米国株式・債券の歴史リターンから各取り崩し率での持続年数を実際に計算している。
- 取引費用
-
未確認
税金は考慮外とされ、運用コストの扱いは本文に明記がない。
- 再現性
-
未確認
他標本・他期間での独立追試は本レコードでは評価していない。
- 日本市場
-
未確認
日本市場のデータは使用していない。
研究で観測された差は、そのまま得られる利益ではありません。4つの関門はそれぞれ独立に読んでください。
この研究を読み解く
何を知りたかったのか
退職後に毎年、初年の取り崩し率を基準にインフレ調整しながら一定の実質額を取り崩す場合、株式と債券の歴史的な値動きを前提にすると資産は何年持つのか。1926年から1976年までの50通りの退職開始年それぞれについて、取り崩し率と株式比率を変えながら比較する。
どうやって調べたのか
米国普通株式(S&P500相当)と中期米国国債を組み合わせたモデルポートフォリオを用い、1926年から1976年までの各年に退職を開始したと仮定した50通りの仮想退職者について、初年の取り崩し率(1〜8%)と株式比率(0・25・50・75・100%)を総当たりで変えながら、毎年インフレ調整した金額を取り崩した場合に資産が尽きるまでの年数(ポートフォリオの持続年数)を歴史的リターンから計算する。株式・債券の実績データはIbbotson Associatesの年鑑(Stocks, Bonds, Bills and Inflation: 1992 Yearbook)に基づく。税金は考慮外とされ、運用コストの扱いは本文に明記がない。
何が分かったのか
初年3%の取り崩し率は全ての退職開始年で資産が最低50年持続し、「絶対的に安全」な水準とされた。初年4%では最も悪いケースでも33年、多くは50年以上持続した。初年5%では1960年代後半〜70年代前半の退職者で約20年しか持たないケースがあった。株式比率は50〜75%で最短持続年数がほぼ同水準を保ちつつ、75%に近づけるほど20年後の資産評価額が大きく増える傾向が示された。
この結果をどう読めばよいか
この研究は、米国株式・債券・インフレの歴史データという特定の標本のもとで、取り崩し率と株式比率の組み合わせによって資産の持続年数がどう変わるかを示したものであり、将来の市場が同じ挙動をすることを保証するものではない。税金は考慮外とされ、対象は米国市場のみで、日本の市場や制度への適用は検証していない。「4%ルール」という広く知られた目安の起源となった研究だが、著者自身も初年5%の取り崩しを「危険」、6%以上を「賭け」と表現しており、万人に一律で当てはまる推奨として書かれたものではない。
- 対象市場
- 米国
- 標本期間
- 1926〜1976
- 対象銘柄群
- 米国普通株式(S&P500相当)50%・中期米国国債50%のモデルポートフォリオ。1926年から1976年までの各年に退職を開始したと仮定した50通りの仮想退職者を対象とする(別途、株式比率0・25・50・75・100%の比較も行う)
- 観測頻度
- annual
- 再現性
- 未評価本レコードでは独立した追試研究の対応を評価していない。同誌1994年1月号のBierwirthによる先行研究を踏まえた発展であることは本文に明記されているが、後続研究との内部evidence関係は未登録。
- 日本市場での有効性
- 未評価米国普通株式(S&P500相当)と米国中期国債の年次データのみを用いており、日本市場の株式・債券データは検証していない。
観測結果
初年3%取り崩しの安全性
初年3%(インフレ調整あり)の取り崩し率は、1926年から1976年までに検証した全ての退職開始年で資産が少なくとも50年持続した。
効果量50 年(最短のポートフォリオ持続年数)(gross)
著者はこの水準(約3.5%までを含む)を「絶対的に安全」と表現した。税金は考慮外とされ、運用コストの扱いは本文に明記がない。
初年4%取り崩しの持続年数
初年4%(インフレ調整あり)の取り崩し率は、検証した全ての退職開始年で資産が最低33年は持続し、多くのケースで50年以上持続した。
効果量33 年(最短のポートフォリオ持続年数)(gross)
著者はこの水準を「最低30年の持続」を満たす安全な取り崩し率として提示した。いわゆる4%ルールの根拠となった記載。
初年5%取り崩しでの最短持続年数
初年5%の取り崩し率では、1960年代後半から1970年代前半に退職を開始した場合、資産が約20年で尽きるケースがあった。
効果量20 年(最短のポートフォリオ持続年数)(gross)
本文はこの水準を「多くの場合、生涯には明らかに不十分」と評した。
株式比率引き上げによる20年後資産額の増加
株式比率を35%から75%へ引き上げると、20年後のポートフォリオ評価額は平均で約123%増加した。
効果量123 %(20年後ポートフォリオ評価額の平均増加率)(gross)
最短のポートフォリオ持続年数(ワーストケース)では株式比率50%と75%はほぼ同水準だったが、蓄積される資産額では75%の方が明確に有利だったとする記載。
効果量は原典の掲載値です。当サイトが再計算したものではなく、将来のリターンを示すものでもありません。
限界
原典の設計上、この結果をそのまま一般化できない条件です。
原典と利用条件
- retailinvestor.org経由の再掲載(原文全文PDFスキャン)https://obj.portfolioconstructionforum.edu.au/articles_perspectives/retailinvestor.org_pdf_Bengen1.pdf
- Financial Planning Association 掲載ページ(アクセス制限により本文未確認)https://www.financialplanningassociation.org/article/journal/MAR04-determining-withdrawal-rates-using-historical-data