株式・債券配分と取り崩し率別に見た退職後ポートフォリオの過去70年成功率(通称トリニティ・スタディ)
Retirement Savings: Choosing a Withdrawal Rate That Is Sustainable
Philip L. Cooley、Carl M. Hubbard、Daniel T. Walz(1998)『AAII Journal』
ひとことで言うと
株式・債券配分と取り崩し率、払い出し期間ごとに、1926年から1995年の米国市場データでポートフォリオが枯渇しなかった割合を集計した研究です。
図で読む:この研究は何を比べたか
取り崩し率7%・30年payoutでの株式比率と成功率
株式50%/債券50%
30年重複期間のうち90%で資金が尽きなかった
1926年から1995年、取り崩し率7%、払い出し期間30年のポートフォリオ成功率
株式25%/債券75%
30年重複期間のうち32%でしか資金が尽きなかった
株式比率を50%から25%へ下げると成功率は58ポイント低下した
利益への距離
- 観測された差
-
確認された
過去の重複期間の集計としてポートフォリオ成功率を実際のデータで観測した。
- 取引費用
-
未確認
税金・取引コストは考慮していない。
- 再現性
-
未確認
独立した追試研究は本レコードで評価していない。
- 日本市場
-
未確認
日本市場のデータでは検証していない。
研究で観測された差は、そのまま得られる利益ではありません。4つの関門はそれぞれ独立に読んでください。
この研究を読み解く
何を知りたかったのか
退職後に資産を毎年取り崩しながら生活する場合、株式と債券の配分、初期の取り崩し率、資金を何年もたせたいかという払い出し期間の組み合わせによって、過去の市場環境ではポートフォリオが尽きずに済んだ期間の割合はどれくらいだったかを問います。
どうやって調べたのか
S&P500種指数で株式リターン、長期高格付社債で債券リターンを表し、1926年から1995年までの年次データ(Ibbotson Associates集計)を用いる。株式100%から債券100%まで5通りの配分、3%から12%まで10段階の初期取り崩し率、15年・20年・25年・30年の4通りの払い出し期間を組み合わせ、重複する各過去期間についてポートフォリオ残高が払い出し期間の終了時点で0を上回ったかを集計し、その割合をポートフォリオ成功率とする。税金と取引コストは考慮しない。追加でインフレ調整後の取り崩しでも同じ集計を行う。
何が分かったのか
1926年から1995年の70年間では、取り崩し率3%と4%はほぼ全ての配分・払い出し期間でポートフォリオを枯渇させなかった。株式比率が高いほど、また取り崩し率が低いほど成功率は高く、債券中心の配分は取り崩し率が7%を超えると成功率が大きく低下する。1946年以降に限ると株式中心の配分の成功率はさらに高まる一方、毎年の引出額を物価上昇率に連動させると、同じ取り崩し率でも成功率は大幅に低下し、6%を超える取り崩し率では多くの組み合わせで低い成功率にとどまった。
この結果をどう読めばよいか
この研究は過去の米国市場という一つの標本内での歴史的頻度を示すものであり、将来の市場環境や税引後・費用控除後の実際の成果を保証するものではない。株式と債券だけの単純な配分であり、リバランス頻度や途中での取り崩し率見直しは想定していない。米国以外の市場での成否は検証されておらず、日本の年金制度や税制への直接の当てはめもできない。
- 対象市場
- 米国
- 標本期間
- 1926〜1995
- 対象銘柄群
- S&P500種指数(株式)と長期高格付社債(債券)の年次リターン。株式100%から債券100%まで5通りの配分を対象とする
- 観測頻度
- annual
- 再現性
- 未評価本レコードでは独立した追試研究の対応を評価していない。Crossref照会では、同著者らによる後続の関連論文(2003年、Financial Services Review掲載)の存在は把握したが、内容は本レコードで確認していない。
- 日本市場での有効性
- 未評価S&P500種指数と米国長期社債の年次データのみを用いており、日本市場の株式・債券データは検証していない。
観測結果
株式100%・取り崩し率4%・30年payoutの成功率
株式100%の配分で取り崩し率4%の場合、1926年から1995年までの30年重複期間の98%でポートフォリオが枯渇しなかった。
効果量98 %(gross)
原文Table1(1926-1995年、100%株式、30年payout列)に記載の値。
株式50%/債券50%・取り崩し率4%・30年payoutの成功率
株式50%/債券50%の配分で取り崩し率4%の場合、同じ30年重複期間の100%でポートフォリオが枯渇しなかった。
効果量100 %(gross)
原文Table1(1926-1995年、50%株式/50%債券、30年payout列)に記載の値。
株式50%/債券50%・取り崩し率7%・30年payoutの成功率
同じ配分で取り崩し率を7%に上げると、成功率は90%まで下がる。
効果量90 %(gross)
原文Table1(1926-1995年、50%株式/50%債券、30年payout列)に記載の値。
株式25%/債券75%・取り崩し率7%・30年payoutの成功率
債券比率を高めた株式25%/債券75%の配分では、取り崩し率7%・30年payoutの成功率は32%まで低下する。
効果量32 %(gross)
原文Table1(1926-1995年、25%株式/75%債券、30年payout列)に記載の値。
インフレ調整後の成功率(株式50%/債券50%・取り崩し率4%・30年payout)
毎年の引出額を消費者物価指数(CPI)に連動させて調整すると、同じ配分・取り崩し率でも成功率は95%へ下がる。
効果量95 %(gross)
原文Table3(インフレ調整後、1926-1995年、50%株式/50%債券、30年payout列)に記載の値。税・手数料控除前の数値であることは変わらない。
効果量は原典の掲載値です。当サイトが再計算したものではなく、将来のリターンを示すものでもありません。
限界
原典の設計上、この結果をそのまま一般化できない条件です。
原典と利用条件
- AAII Journal 1998年2月号原文PDF(出版社サイト)https://www.aaii.com/journal/199802/feature.pdf