15カ国の株価指数で「最良・最悪の数日」が長期リターンを左右することを示した研究
Black Swans and Market Timing: How Not to Generate Alpha
Javier Estrada(2008)『The Journal of Investing』
ひとことで言うと
世界15カ国の株価指数で、ごくわずかな「最良・最悪の日」が長期リターンの大半を決めることを示した研究です。
図で読む:この研究は何を比べたか
最良のわずか10日が終値を左右する
全日パッシブ投資
終値は基準のまま。15市場平均の年複利は8.2%。
15市場の標本期間全体(終了はいずれも2006年末)でのパッシブ投資との比較
最良10日を逃した場合
終値は平均50.8%目減りし、年複利は6.3%に低下した。
最良のわずか10日の有無だけで、終値が半分近く変わった。
利益への距離
- 観測された差
-
確認された
15市場・約16万営業日の実際の日次収益率を集計して終値を比較した観測研究。
- 取引費用
-
未確認
配当・取引コストを除く価格リターンのみで比較しており、費用控除後の実現可能性は検証していない。
- 再現性
-
未確認
本レコードでは独立追試を評価しておらず、他研究との照合は行っていない。
- 日本市場
-
確認された
日本は15市場の一つとして含まれ、他市場と同様に少数日が終値を左右する結果が観測された。
研究で観測された差は、そのまま得られる利益ではありません。4つの関門はそれぞれ独立に読んでください。
この研究を読み解く
何を知りたかったのか
株式市場の長期リターンは日々の値動きの積み重ねで滑らかに実現するのか、それともごく少数の突出した日によって左右されるのか。もしそうなら、その少数の日を事前に予測して売買タイミングを計ることは現実的かを問います。
どうやって調べたのか
15カ国の株価指数(日本を含む)の日次収益率、合計約16万営業日分を用い、各市場の標本期間全体と1990〜2006年の17年間の両方について、パッシブ投資の終値と、最良・最悪の10日・20日・100日をそれぞれ除外した場合の終値を比較しました。
何が分かったのか
標本期間全体では、最良10日を逃すと終値は平均50.8%目減りし、最悪10日を避けられれば平均150.4%増えました。より短い1990〜2006年の分析でも、最良10日を逃すと43.3%減、最悪10日を避けると87.9%増という同様の傾向が確認され、日本を含むいずれの市場でも標準偏差3以上の外れ値が理論上の期待をはるかに上回る頻度で観測されました。
この結果をどう読めばよいか
少数の取引日が長期成果の大半を決めるという結果は、事後的にはその日を特定できても、事前に予測して売買タイミングを計ることの難しさを裏づけます。ただし本研究は配当・取引コストを除いた価格リターンの比較であり、実際に売買を繰り返した場合の手数料や税負担を反映した検証ではありません。日本市場は15市場の一つとして含まれていますが、指数名や日本固有の効果量は原論文の表からは本レコードで確認できていません。
- 対象市場
- グローバル
- 標本期間
- 未確認〜2006-12-31(15市場それぞれの標本開始年は原論文の表(Exhibit 2)に記載があるが、PDFのテキスト抽出では表内の個別数値を確認できず開始年を断定できない。本文には全市場の終了時点が2006年12月31日である旨が繰り返し明記されている。)
- 対象銘柄群
- 15カ国・地域の代表株価指数(S&P500・日経平均など、市場ごとに1本)の日次収益率、標本全体で合計160,278営業日分
- 観測頻度
- daily
- 再現性
- 未評価本レコードでは独立した追試研究の有無を評価していない。
- 日本市場での有効性
- 支持日本は原論文の15市場の一つとして分析対象に含まれる。1990〜2006年の分析では、日本はパッシブ投資の終値が投資元本を下回った3市場(日本・台湾・タイ)の一つであり、他市場と同様に少数日が終値を大きく左右する結果が観測された。ただし表内の日本固有の指数名や効果量はPDFのテキスト抽出では確認できず、本レコードのfindingsには含めていない。
観測結果
最良10日を逃した場合の終値変化(全期間・15市場平均)
各市場の標本期間全体を通じ、パッシブ投資に対して最良10日を逃した場合に終値がどれだけ変化したか。
効果量-50.8 %(gross)
配当・取引コストを除く価格リターンに基づく15市場平均。各市場の標本開始年は異なるが終了はいずれも2006年末(本文Evidence(II)節)。
最悪10日を回避した場合の終値変化(全期間・15市場平均)
同じ全期間データで、最悪10日を回避した場合に終値がどれだけ変化したか。
効果量150.4 %(gross)
上記と同じ全期間データに基づく15市場平均。
最良10日を逃した場合の終値変化(1990〜2006年・17年間サブ標本)
全15市場に共通する1990年〜2006年の17年間の短い標本で、最良10日を逃した場合に終値がどれだけ変化したか。
効果量-43.3 %(gross)
本文Evidence(III)節。この期間は日本を含む3市場(日本・台湾・タイ)でパッシブ投資自体の終値が投資元本を下回った。
最悪10日を回避した場合の終値変化(1990〜2006年・17年間サブ標本)
同じ17年間サブ標本で、最悪10日を回避した場合に終値がどれだけ変化したか。
効果量87.9 %(gross)
上記と同じ1990〜2006年サブ標本に基づく15市場平均。
効果量は原典の掲載値です。当サイトが再計算したものではなく、将来のリターンを示すものでもありません。
限界
原典の設計上、この結果をそのまま一般化できない条件です。
原典と利用条件
- 出版社ページ(DOI、Crossrefで確認)https://doi.org/10.3905/joi.2008.710917
- 著者(IESE Business School)公開PDF全文https://blog.iese.edu/jestrada/files/2012/06/BlackSwans.pdf