米国の店頭FXレバレッジ上限規制は、高レバレッジ利用者の損失をどう変えたか
Should Retail Investors' Leverage Be Limited?
Rawley Z. Heimer、Alp Simsek(2019)『Journal of Financial Economics』
出版社ページ(DOI) NBER Working Paper w24176(2019年6月改訂版) MIT DSpace機関リポジトリ掲載全文PDF
ひとことで言うと
米国が2010年に個人向け店頭FXのレバレッジを主要通貨ペアで50倍までに制限したところ、規制前に高レバレッジを使っていたトレーダーの損失が緩和したことを示した研究です。
図で読む:この研究は何を比べたか
レバレッジ規制の前後で、高レバレッジ利用者の損失が縮む
規制前
高レバレッジ利用者の月次損失が大きい状態
CFTCの上限規制(主要通貨50倍・2010年)
規制後
高レバレッジ利用者の損失が40%緩和
利益への距離
- 観測された差
-
確認された
米欧トレーダーの実際の取引記録を用いた差分の差分推定で、損失の緩和幅を数値として観測した。
- 取引費用
-
未確認
取引費用控除後の投資成果を独立に比較したものではない。
- 再現性
-
未確認
独立した追試研究は本レコードでは評価していない。
- 日本市場
-
未確認
日本市場のレバレッジ規制やトレーダーは対象外。
研究で観測された差は、そのまま得られる利益ではありません。4つの関門はそれぞれ独立に読んでください。
この研究を読み解く
何を知りたかったのか
レバレッジの上限規制は、個人トレーダーの投機的な取引を抑えて損失を減らすのか、それとも規制されていない市場と比べて取引の場を狭めるだけで市場の質には違いが出ないのかを問います。
どうやって調べたのか
2010年に米国CFTCが導入した店頭FXレバレッジの上限規制を境に、規制対象となった米国トレーダーと、規制対象外だった欧州トレーダーの取引記録を、社会的トレード共有サービス経由で比較します。両者の取引量・損益・ブローカーの運営資本・買値売値スプレッドの変化を、規制前後と米欧間で二重に比較する差分の差分分析で推定します。
何が分かったのか
規制導入後、規制対象トレーダーの取引量は23%減少し、規制前に高レバレッジを利用していたトレーダーの損失は40%緩和され、ブローカーの運営資本は25%減少しました。一方でブローカーが提示する買値・売値スプレッドには変化がありませんでした。
この結果をどう読めばよいか
規制はレバレッジの提供を絞ることで高レバレッジ利用者の損失を減らした一方、市場の流動性の目安となる買値・売値スプレッドは悪化しなかったと報告されています。ただし対象は米国と欧州の店頭FX個人トレーダーであり、日本の金融庁によるレバレッジ規制や、株式・CFDなど他の商品への一般化はこの研究だけでは判断できません。
- 対象市場
- 米国・欧州
- 標本期間
- 2010-05〜2011-04
- 対象銘柄群
- 社会的トレード共有サービス(論文中の匿名名称myForexBook)経由で観測した米国・欧州のリテールFXトレーダー2,672人(米国1,193人、欧州1,479人)の取引記録。米国トレーダーを2010年CFTCレバレッジ上限規制の対象群、欧州トレーダーを規制対象外の比較群として扱う。
- 観測頻度
- monthly
- 再現性
- 未評価本レコードでは独立した追試研究の対応を評価していない。
- 日本市場での有効性
- 未評価米国と欧州のリテールFXトレーダーを対象とした研究であり、日本の金融庁による店頭FXレバレッジ規制やその対象トレーダーは検証していない。
観測結果
取引量の減少
レバレッジ上限規制の導入後、規制対象トレーダーの取引量が減少した。
効果量23 %(not_reported)
抄録記載の値。グロス・コスト控除後等の算出基準は抄録に明記されていない。
高レバレッジ利用者の損失緩和
規制導入後、規制前に高レバレッジを利用していたトレーダーの損失が緩和した。
効果量40 %(not_reported)
抄録記載の値。損益の算出基準(グロス・コスト控除後・リスク調整後等)は抄録に明記されていない。
ブローカー運営資本の減少
規制導入後、ブローカーの運営資本が減少した。
効果量25 %(not_reported)
抄録記載の値。
買値・売値スプレッドへの影響
規制は、ブローカーが提示する相対的な買値・売値スプレッドには影響しなかった。
効果量未掲載(not_reported)
抄録は方向のみを記載し、数値は示していない。
効果量は原典の掲載値です。当サイトが再計算したものではなく、将来のリターンを示すものでもありません。
限界
原典の設計上、この結果をそのまま一般化できない条件です。
原典と利用条件
- 出版社ページ(DOI)https://doi.org/10.1016/j.jfineco.2018.10.017
- NBER Working Paper w24176(2019年6月改訂版)https://www.nber.org/papers/w24176
- MIT DSpace機関リポジトリ掲載全文PDFhttps://dspace.mit.edu/bitstream/handle/1721.1/134174/w24176.pdf?sequence=2