確定拠出年金における自社株集中保有の実態とリスク、分散推進の政策選択肢を検討した研究
The Role of Company Stock in Defined Contribution Plans
Olivia S. Mitchell、Stephen P. Utkus(2002)『NBER Working Paper Series (No. 9250)』
ひとことで言うと
確定拠出年金における自社株の集中保有がなぜ生じ、参加者のリスクにどう影響するかを整理し、分散を促す政策の選択肢を検討した研究です。
図で読む:この研究は何を比べたか
自社株への拠出誘導が、集中保有と倒産時の損失リスクにつながる経路
- 雇用者が拠出を自社株へ誘導大企業のDC制度ほど、拠出を自社株に向け分散を制限する設計が見られる
- 参加者もリスクを過小評価参加者は自社株のリスクを他の個別株より低いと見なし、過去の株価成績に頼る傾向がある
- 株式保有が集中制度全体として自社株への集中保有が生じる
- 倒産時に退職貯蓄を喪失集中保有を伴う制度では、企業倒産により退職貯蓄を失う参加者が常に生じる
- 分散推進とそのトレードオフ分散を促すとこのリスクは緩和されるが、企業が自社株拠出を他の株式報酬や現金報酬へ振り替える可能性もある
利益への距離
- 観測された差
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一部のみ
抄録は集中保有とリスクの関係を定性的に述べているが、効果量や保有比率の数値は示していない。
- 取引費用
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対象外
売買戦略や取引費用を検証した研究ではない。
- 再現性
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未確認
独立した追試研究の評価は本レコードでは行っていない。
- 日本市場
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未確認
米国の確定拠出年金制度が対象であり、日本の企業型・個人型確定拠出年金は検証されていない。
研究で観測された差は、そのまま得られる利益ではありません。4つの関門はそれぞれ独立に読んでください。
この研究を読み解く
何を知りたかったのか
米国の確定拠出年金(DC)制度で、なぜ一部の企業は従業員に自社株を集中して保有させるのか。集中保有は誰にどのようなリスクをもたらし、分散を促す制度設計にはどのような選択肢と副作用があるのかを問います。
どうやって調べたのか
米国労働省(USDOL)やEBRI/ICI、業界各社の調査データを用いて確定拠出年金における自社株保有の実態を整理し、企業側と従業員側の双方から集中保有が生じる理由を検討します。あわせてモンテカルロ・シミュレーションにより、自社株中心の運用と分散運用とで退職時資産にどのような違いが生じ得るかを例示します。
何が分かったのか
大企業の確定拠出年金では、雇用者が拠出を自社株へ誘導し分散を制限する制度設計が集中保有を生みやすいことを示しました。また、参加者は自社株のリスクを他の個別株より低いと過小評価する傾向や、過去の株価成績に基づいて配分を決める傾向が見られました。株式保有が集中した制度では、企業倒産によって退職貯蓄の一部を失う参加者が常に生じるとし、分散推進の便益と、それが企業の拠出行動に及ぼしうる副作用の両面を論じています。
この結果をどう読めばよいか
この論文はNBERワーキングペーパーであり、査読付き学術誌に掲載された論文ではありません。抄録自体には具体的な効果量の数値は記載されておらず、方向性の記述にとどまります。対象は米国の確定拠出年金制度に限られ、日本の企業型・個人型確定拠出年金への当てはめは検証されていません。
- 対象市場
- 米国
- 標本期間
- 未確認(抄録に標本期間の記載がないため未確認。本文はUSDOL Form 5500(1998年分)やEBRI/ICI調査(2001年時点)など複数時点のデータを組み合わせているが、抄録自体は対象期間を明示していない。)
- 対象銘柄群
- 米国の雇用者提供型確定拠出年金(DC)制度。抄録は対象範囲の細目を明示しておらず、本文ではUSDOL・EBRI/ICI・PSCA等の複数調査データと、著者らによるモンテカルロ・シミュレーションを組み合わせている。
- 観測頻度
- 複数の年次調査・行政データを組み合わせた記述的分析であり、単一の観測頻度には該当しない
- 再現性
- 未評価本論文はNBERワーキングペーパーであり、査読付き学術誌には掲載されていない。後にOlivia S. Mitchell・Kent Smetters編『The Pension Challenge: Risk Transfers and Retirement Income Security』(Oxford University Press, 2003)の同名章として収録されたことをOxford Academicの書誌情報で確認したが、著者情報の食い違い(Crossrefが章著者をMitchell・Smettersと記載)を解消できなかったため、この書籍版は本レコードのversionsへ加えず、独立追試の評価も行っていない。
- 日本市場での有効性
- 未評価米国の確定拠出年金(DC)制度を対象とした研究であり、日本の企業型・個人型確定拠出年金への当てはめは検証されていない。
観測結果
自社株集中保有が生じる制度設計
大企業の確定拠出年金ほど、雇用者が拠出を自社株へ誘導し分散を制限する制度設計が見られ、これが集中した株式保有につながりやすい。
効果量未掲載(not_reported)
抄録は方向性のみを述べ、具体的な保有比率や対象企業数は示していない。数値は本文の各表を参照。
参加者のリスク認識と過去成績への依存
参加者は自社株のリスクを過小評価する傾向があり、投資判断において自社株の過去の株価成績への依存が指摘される。
効果量未掲載(not_reported)
抄録はこの傾向の存在を述べるのみで、効果量は示していない。
集中保有のリスクと分散推進のトレードオフ
株式保有が集中した退職制度では企業倒産により退職貯蓄の一部または全部を失う参加者が常に生じるとし、分散推進はこのリスクを緩和しうる一方で、企業が自社株拠出を他の株式報酬形態や現金報酬へ振り替える可能性を指摘する。
効果量未掲載(not_reported)
抄録は方向性のみを述べ、効果量や発生確率の数値は示していない。
効果量は原典の掲載値です。当サイトが再計算したものではなく、将来のリターンを示すものでもありません。
限界
原典の設計上、この結果をそのまま一般化できない条件です。
原典と利用条件
- NBERページ(ワーキングペーパー概要・DOI)https://www.nber.org/papers/w9250
- NBERワーキングペーパー本文PDFhttps://www.nber.org/system/files/working_papers/w9250/w9250.pdf