投資期間中に損失に陥る確率・規模・継続期間をドルコスト平均法と一括投資で比較した研究
Within-horizon exposure to loss for dollar cost averaging and lump sum investing
William J. Trainor Jr.(2005)『Financial Services Review』
出版社ページ(Financial Services Review、ジョージア大学Open Journals) 出版社ページ(DOI)
ひとことで言うと
投資期間中に一度でも損失状態に陥る確率・規模・継続期間を、ドルコスト平均法と一括投資で理論的に比較した研究です。
図で読む:この研究は何を比べたか
一括投資とドルコスト平均法、途中の損失曝露を比較
一括投資(lump sum)
投資期間中に一度でも損失状態に陥る確率が90%超と高く、損失局面に入ると平均1.5年続くと計算される。
5年の株式投資期間について、投資期間中の損失リスクをfirst-passage time probability(初通過時間確率)で理論的に比較
ドルコスト平均法(DCA)
損失確率は50%未満に下がり、条件付き期待ショートフォールは65%縮小、損失の継続期間は平均4カ月に短縮されると計算される。
ドルコスト平均法は投資期間中の損失への曝露を確率・規模・期間の三方向で理論的に縮小する
利益への距離
- 観測された差
-
一部のみ
first-passage time probabilityという確率過程モデルに基づく理論計算であり、実際の市場データを用いた実証検証ではない。
- 取引費用
-
対象外
取引コストや税金は考慮されておらず、費用控除後の比較ではない。
- 再現性
-
未確認
他研究による独立の追試・再現は本レコードでは確認していない。
- 日本市場
-
未確認
日本市場のデータや制度を用いた検証は行われていない。
研究で観測された差は、そのまま得られる利益ではありません。4つの関門はそれぞれ独立に読んでください。
この研究を読み解く
何を知りたかったのか
投資資金をまとめて一度に投じる一括投資と、複数回に分けて投じるドルコスト平均法とでは、投資期間の途中で評価額が元本を下回る損失状態に陥る確率、その時に抱える損失額、そして損失状態がどれくらい続くかという3つの側面で、どちらが投資家の負担を軽くするのかを問う研究です。
どうやって調べたのか
著者は株価が確率的に変動する過程を仮定し、投資期間中のどの時点でも評価額が元本を下回る状態に一度でも入るかどうかを判定するfirst-passage time probability(初通過時間確率)という統計量を用いる。実際の市場データを集めて検証するのではなく、5年の投資期間を想定した理論モデルの中で、一括投資とドルコスト平均法それぞれについて、損失に陥る確率、損失局面での条件付き期待ショートフォール、損失状態が続くと期待される期間の三つを計算し比較する。
何が分かったのか
5年の株式投資期間について、投資期間中に一度でも損失状態を経験する確率は、一括投資では90%を超えるのに対し、ドルコスト平均法では50%未満まで下がる。損失局面に入った場合の条件付き期待ショートフォールはドルコスト平均法によって65%縮小し、損失状態が続くと期待される期間も一括投資の1.5年からドルコスト平均法では4カ月へ短くなることが示された。
この結果をどう読めばよいか
この結果は、最終到達時点の期待リターンではなく、投資期間の途中でどれだけ損失に晒されるかという観点からドルコスト平均法を評価するものであり、含み損に耐えにくい、途中で資金を引き出す可能性がある、退職時期が確定していないといった投資家に関連が深い。一方で理論的な確率モデルによる計算であり、取引コストや税金は考慮されておらず、実際の市場データを用いた検証や日本市場での確認は行われていない。
- 対象市場
- 米国
- 標本期間
- 未確認(理論研究であり、first-passage time probabilityに基づく確率計算のため、実証標本や観測期間の記載が一次資料の抄録にない。)
- 対象銘柄群
- 実証標本なし。5年の投資期間を想定し、株価が確率過程に従うと仮定した理論モデルにより、ドルコスト平均法と一括投資の投資期間中の損失曝露をfirst-passage time probabilityで比較する研究。
- 観測頻度
- 該当なし(理論研究のためデータ頻度の概念がない)
- 再現性
- 未評価理論モデルによる比較であり、本レコードでは他研究による独立の再現・追試状況を評価していない。
- 日本市場での有効性
- 未評価米国の学術誌に掲載された理論研究であり、日本市場のデータや制度を用いた検証は行われていない。
観測結果
損失に直面する確率の低減
5年の株式投資期間中に一度でも損失状態を経験する確率は、一括投資では90%を超えるのに対し、ドルコスト平均法では50%未満まで下がる。
効果量未掲載(not_reported)
抄録の数値は「90%超から50%未満」という範囲の比較として記載されており、単一の減少幅は明記されていないためvalue欄には数値を入れない。first-passage time probabilityに基づく理論計算であり実証標本ではない。
条件付き期待ショートフォールの縮小
損失状態に陥った場合の条件付き期待ショートフォール(ドル建ての想定損失額)は、ドルコスト平均法によって一括投資比で65%縮小する。
効果量65 %(条件付き期待ショートフォールの縮小率)(not_reported)
first-passage time probabilityに基づく理論的な比較値であり、取引コストや税金は考慮されていないためbasisはnot_reportedとする。実証標本ではなく計算上の比較値。
損失状態が続く期待期間の短縮
損失状態を経験した場合にその状態が続くと期待される期間は、一括投資の1.5年からドルコスト平均法では4カ月へ短縮する。
効果量未掲載(not_reported)
抄録の数値は「1.5年から4カ月」という前後比較として記載されており、単一の短縮幅は明記されていないためvalue欄には数値を入れない。
効果量は原典の掲載値です。当サイトが再計算したものではなく、将来のリターンを示すものでもありません。
限界
原典の設計上、この結果をそのまま一般化できない条件です。
原典と利用条件
- 出版社ページ(Financial Services Review、ジョージア大学Open Journals)https://openjournals.libs.uga.edu/fsr/article/view/4835
- 出版社ページ(DOI)https://doi.org/10.61190/fsr.v14i4.4835