結論

水準そのものを推奨した研究は台帳にありません。損切り水準・費用条件・対象資産によって 報告される最適な幅は異なり、単一の数値には収束していません。

損切りや利確を何パーセントに設定するのが適切かという問いに、単一の答えを出した研究は 台帳にありません。報告されている数値は、研究ごとに前提としている資産・標本・目的が 異なり、そのまま流用できる形では示されていません。

Han, Zhou & Zhu (2014) は、米国株のモメンタム戦略に10パーセントの損切り水準を課した 場合の最大月次損失を報告しています。等加重モメンタムでは-49.79%から-11.36%へ、 時価総額加重モメンタムでは-64.97%から-23.28%へ縮小したとされていますが、この10%という 水準そのものが最適だと検証した研究ではなく、あらかじめ設定した一つの水準での結果です。

Dai, Marshall, Nguyen & Visaltanachoti (2021) は、トレーリングストップの幅を変えて 比較し、取引費用を考慮すると幅の狭いルールの利点は減る一方、幅の大きいルールは 費用控除後も有用性が残ったと報告しています。つまり適切な幅は、費用条件によっても変わります。

Kang (2026) は金市場でMACDの最適パラメータと損切り・利確水準をあわせて特定しています。 金市場と株式市場を比較すると最適パラメータ範囲と投資ホライズンに大きな異質性があり、 資産をまたぐパラメータの移転可能性には限界があると結論しています。

  • 損切り水準10パーセントという設定は、モメンタム戦略という特定の対象での一つの検証結果であり、最適水準の探索結果ではない
  • 費用を考慮すると、幅の大きいルールほど有用性が残りやすいという条件つきの関係が報告されている
  • 資産(株式・金など)が変われば最適な水準の範囲も変わり、単純な移転はできないと報告されている

「何パーセントが正解か」という問いに答えた研究は台帳にありません。水準は対象資産・標本・ 費用条件に依存すると読むのが、現時点の研究群の到達点です。

参照した研究

限界

対象は米国株のモメンタム戦略・米国普通株・金市場であり、日経225や日本の信用取引を 直接の標本とした損切り・利確水準の検証は含まれていない。取引費用の条件も研究ごとに異なる。