トレーリングストップは、平均リターンでは劣り、リスクでは勝つ

Risk reduction using trailing stop-loss rules

Bochuan Dai、Ben R. Marshall、Nhut H. Nguyen、Nuttawat Visaltanachoti(2021)『International Review of Finance』

ひとことで言うと

トレーリングストップは平均リターンでベンチマークに劣る一方、総リスクと下方リスクを下げると報告した米国株の実証研究。

図で読む:この研究は何を比べたか

群の比較 方向のみ・数値なし

リターンでは劣り、リスクでは勝つという分かれ方

平均リターン

ベンチマークに劣後する

何を比較指標に取るか

総リスクと下方リスク

低下する。下落局面で特に大きい

評価軸によって優劣が逆転する

CRSPの米国普通株を対象に、平均分散最適ベンチマークと比較した結果です。平均リターンは劣後する一方、総リスクと下方リスクは低下しました。

利益への距離

観測された差

支持されない

平均リターンはベンチマークに劣後しており、収益の改善は報告されていない。

取引費用

一部のみ

費用考慮後も有用性が残るのは幅の大きいルールに限られる。

再現性

未確認

独立標本での追試は本レコードでは評価していない。

日本市場

未確認

標本は米国株であり、日本市場は検証されていない。

研究で観測された差は、そのまま得られる利益ではありません。4つの関門はそれぞれ独立に読んでください。

この研究を読み解く

何を知りたかったのか

トレーリングストップは、価格が上がるにつれて売却の発動価格を引き上げていく損切りです。値上がり益を守る狙いがありますが、本当にリターンを高めるのか、それとも守れるのはリスクだけなのか。取引費用を差し引いても利点が残るのかも問われます。

どうやって調べたのか

CRSPの米国普通株を対象に、1926年7月から2016年12月までの日次データでトレーリングストップの成績を集計します。比較対象は平均分散の目的関数を組み込んだベンチマークです。相場局面はCRSP時価総額加重指数の月次リターンの符号で上昇と下落に分け、局面別の効果も回帰で確認します。

何が分かったのか

平均リターンはベンチマークに対して劣後しました。一方で、損失を止めるという点では有効に働き、総リスクと下方リスクの双方を低下させています。この低下は下落局面で特に大きく現れました。取引費用を織り込むと幅の狭いルールの利点は減りますが、幅の大きいルールは費用考慮後も有用性が残ったと報告されています。

この結果をどう読めばよいか

リターンを高める手段としてではなく、リスクを下げる手段として評価された結果です。平均リターンが劣後する以上、成績の改善を期待する読み方は原典の報告と合いません。標本はCRSPの米国普通株であり、日本市場、レバレッジ型商品、信用取引の金利や諸費用は検証の対象に含まれていません。

対象市場
米国
標本期間
1926-072016-12
対象銘柄群
CRSPの米国普通株(share code 10、11、12)
観測頻度
daily
再現性
未評価本研究の結果について、独立標本での再現は本レコードでは評価していない。
日本市場での有効性
未評価標本はCRSPの米国普通株であり、日本市場での成立は評価していない。

観測結果

主要な観測結果

トレーリングストップは平均分散最適ベンチマークに対し平均リターンで劣る一方、損失の抑制に有効で、総リスクと下方リスクを低下させた。。

効果量未掲載(not_reported)

平均リターンとリスク指標で向きが逆になる結果であり、単一の効果量に要約できない。効果量は原典の表定義を参照。

取引費用を考慮した場合

取引費用は幅の狭い損切りルールの利点を減じるが、幅の大きい損切りルールは費用考慮後も有用性が残った。。

効果量未掲載(net_of_costs)

費用控除後に残る効果の大きさは原典の表定義を参照。費用の水準設定も原典による。

相場局面による差

総リスクと下方リスクの低下は、下落局面で特に大きかった。。

効果量未掲載(not_reported)

局面の判定はCRSP時価総額加重指数の月次リターンの符号による。効果量は原典の表定義を参照。

効果量は原典の掲載値です。当サイトが再計算したものではなく、将来のリターンを示すものでもありません。

追試の記録

この結果を追試した研究として、当サイトが台帳に持っているレコードです。

  • 独立研究分野背景 損切りの価値が価格過程に依存することを示した先行研究であり、本研究のトレーリングストップ実装の追試ではない。 関連研究のレコードを見る

「独立研究」は原典と著者が重ならない研究、「同一著者」は原典の著者を含む研究です。追試の件数は網羅ではありません。

限界

原典の設計上、この結果をそのまま一般化できない条件です。

  • 単一市場
  • 日本市場未検証

原典と利用条件

提供元
publisher
メタデータライセンス
other
本文再利用
none
原典確認日
2026-08-12
解説の確認範囲
本文まで確認
解説確認日
2026-08-12
レコード更新日
2026-08-12
機械可読レコード
dai-marshall-nguyen-visaltanachoti-2021-trailing-stop.json