損切りルールが損失を止める条件と、止めない条件
When do stop-loss rules stop losses?
Kathryn M. Kaminski、Andrew W. Lo(2014)『Journal of Financial Markets』
ひとことで言うと
損切りルールはいつ損失を止めるのか。ランダムウォーク下では期待リターンを下げ、モメンタムがある局面では価値を加えうると導いた。
図で読む:この研究は何を比べたか
価格の性質しだいで損切りの符号が反転する
ランダムウォーク
期待リターンは低下する
対象の価格過程の性質
モメンタムあり
価値を加えうる
効果の符号が条件で入れ替わる
利益への距離
- 観測された差
-
一部のみ
実証は損切り発動期間に限った比較であり、通年成績ではない。
- 取引費用
-
未確認
取引費用を差し引いた後の比較は抄録に示されていない。
- 再現性
-
未確認
独立標本での追試は本レコードでは評価していない。
- 日本市場
-
未確認
標本は米国であり、日本市場は検証されていない。
研究で観測された差は、そのまま得られる利益ではありません。4つの関門はそれぞれ独立に読んでください。
この研究を読み解く
何を知りたかったのか
損切りは、累積損失が一定水準に達した時点で持ち高を減らす運用です。実務で広く使われる一方、効果を疑う批判もあります。この研究は、どのような条件で損切りが戦略の成績を改善し、どのような条件で悪化させるのかを問います。
どうやって調べたのか
任意の戦略へ損切りを重ねたときの期待リターンとボラティリティの変化を測る枠組みを作り、価値が増減する条件を数式で導きます。あわせて、米国株のバイ・アンド・ホールドへ損切りを適用し、退避先を米国長期国債とする実証を行います。標本は1950年1月から2004年12月までの月次リターンです。
何が分かったのか
ランダムウォーク仮説の下では、単純な0/1型の損切りは戦略の期待リターンを常に低下させると示されました。一方、リターンに正の系列相関がある場合には価値を加えうると導かれています。実証では、損切りが発動していた期間について、バイ・アンド・ホールドに月あたり50から100ベーシスポイントを上乗せするルールが存在したと報告されました。
この結果をどう読めばよいか
損切りが常に有効だと示した研究ではありません。効果の符号は対象の価格過程に依存し、ランダムウォークに近い対象では期待リターンを下げる側へ働くと述べています。報告された月50から100ベーシスポイントは損切りが発動していた期間に限った比較であり、通年の運用成績を表すものではありません。日本市場と信用取引の費用は標本に含まれません。
- 対象市場
- 米国
- 標本期間
- 1950-01
〜2004-12 - 対象銘柄群
- 米国株のバイ・アンド・ホールド戦略と、退避先とした米国長期国債
- 観測頻度
- monthly
- 再現性
- 未評価報告された月次50〜100ベーシスポイントについて、独立標本での再現は本レコードでは評価していない。
- 日本市場での有効性
- 未評価標本は米国株と米国長期国債であり、日本市場での成立は評価していない。
観測結果
主要な観測結果
ランダムウォーク下では0/1型の損切りが期待リターンを低下させ、モメンタムがある場合は価値を加えうる。。
効果量未掲載(not_reported)
効果の符号が価格過程の性質に依存するという条件付きの結果であり、単一の効果量では表せない。
実証分析での報告値
損切りが発動していた期間における、バイ・アンド・ホールドに対する月次の上乗せ。。
効果量未掲載(not_reported)
原典は月あたり50〜100ベーシスポイントという幅で報告しており、単一値ではないため未収録。発動期間に限った比較である。
効果量は原典の掲載値です。当サイトが再計算したものではなく、将来のリターンを示すものでもありません。
追試の記録
この結果を追試した研究として、当サイトが台帳に持っているレコードです。
- 別の著者が価格モデルとブートストラップで損切りの効果を再検討した関連研究であり、本研究の実証値の追試ではない。 関連研究のレコードを見る
「独立研究」は原典と著者が重ならない研究、「同一著者」は原典の著者を含む研究です。追試の件数は網羅ではありません。
限界
原典の設計上、この結果をそのまま一般化できない条件です。
原典と利用条件
- 出版社ページ(DOI)https://doi.org/10.1016/j.finmar.2013.07.001
- SIFR Research Report 63(抄録ページ)https://ideas.repec.org/p/hhs/sifrwp/0063.html