台湾のデイトレーダーは、典型的な半年間で8割超が損失を出した
Do Individual Day Traders Make Money? Evidence from Taiwan
Brad M. Barber、Yi-Tsung Lee、Yu-Jane Liu、Terrance Odean(2004)『Working paper』
ひとことで言うと
台湾市場のデイトレードを1995年から1999年まで全件集計し、典型的な半年間で8割超が損失を出したと報告した研究。
図で読む:この研究は何を比べたか
粗利益はあったが、費用を越えたのは少数だけ
台湾市場のデイトレード全件(1995〜1999年)
粗利益(取引費用の控除前)
デイトレードの多い層は粗利益を得た。
手数料と取引税の控除後
粗利益は取引費用を賄うのに足りなかった。
半年ごとの損益分布
典型的な半年間で10人中8人超が損失を出した。
過去の成績が強かった少数の層
買った銘柄が売った銘柄を1日あたり62ベーシスポイント上回り、抄録はこの差が費用を賄える大きさだとしている。
利益への距離
- 観測された差
-
一部のみ
粗利益は得たが費用を賄えず、典型的な半年間で8割超が損失を出している。
- 取引費用
-
一部のみ
取引費用の控除後に優位が残るのは、過去の成績が強かった少数の層に限られる。
- 再現性
-
未確認
後続研究は同一著者かつ重複標本であり、独立標本での追試は評価していない。
- 日本市場
-
未確認
標本は台湾市場であり、日本市場のデイトレードは検証されていない。
研究で観測された差は、そのまま得られる利益ではありません。4つの関門はそれぞれ独立に読んでください。
この研究を読み解く
何を知りたかったのか
デイトレードで実際にどれだけの人が利益を残しているのかは、長らく少数の口座を調べた断片的な証拠しかありませんでした。米国の議会調査でも対象は一握りの口座に限られています。台湾証券取引所の全取引記録を使えば、市場全体の規模でこの問いに答えられます。
どうやって調べたのか
同一銘柄を同一日に売買した取引をデイトレードと定義し、1995年から1999年までの台湾証券取引所の取引記録から個人投資家のデイトレードをすべて抽出します。売買高に占める比率と、どれだけ少数の投資家に集中しているかを集計したうえで、粗利益と、手数料や取引税を差し引いた後の損益を計算します。さらに過去の成績で投資家を並べ、成績の良かった層がその後も高いリターンを続けるかを確かめます。
何が分かったのか
個人投資家のデイトレードは総売買高の20%超を占め、デイトレード活動の97%超が個人投資家によるものでした。個人投資家の約1%がデイトレードの半分を占めるほど集中しています。取引の多い層は粗利益を得ましたが、その利益は取引費用を賄うには足りませんでした。典型的な半年間では10人中8人超が損失を出しています。一方で過去の成績が強かった少数の層は高いリターンを続け、買った銘柄が売った銘柄を1日あたり62ベーシスポイント上回りました。
この結果をどう読めばよいか
全体では費用を賄えない取引が大半である一方、少数には持続的な差があるという二つの結果が同時に報告されています。62ベーシスポイントは買い銘柄と売り銘柄のリターン差であり、個々の投資家の実現損益そのものではありません。標本は1995年から1999年の台湾市場であり、手数料の水準、取引税、値幅制限などの制度が日本とは異なるため、この比率をそのまま日本のデイトレードへ当てはめることはできません。
- 対象市場
- その他
- 標本期間
- 1995
〜1999 - 対象銘柄群
- 台湾証券取引所の全取引記録から特定した個人投資家のデイトレード(同一銘柄を同一日に売買した取引)
- 観測頻度
- daily
- 再現性
- 未評価大多数が損失を出すこと、および少数に持続的な優位があることについて、著者らと独立した研究者による別標本での再現は本レコードでは評価していない。
- 日本市場での有効性
- 未評価標本は台湾証券取引所の取引記録であり、日本市場のデイトレードでの成立は評価していない。
観測結果
デイトレードの規模と集中
個人投資家によるデイトレードは1995年から1999年の総売買高の20%超を占め、デイトレード活動の97%超が個人投資家によるものだった。個人投資家の約1%がデイトレードの半分と、個人投資家の総取引の4分の1を占めた。。
効果量未掲載(not_reported)
抄録に記載された比率をそのまま収録し、再計算や換算は行っていない。
取引費用控除後の損益
デイトレードの多い層は粗利益を得たが、その利益は取引費用を賄うのに十分ではなかった。。
効果量未掲載(net_of_costs)
粗利益と取引費用の水準は抄録に数値で示されておらず、方向のみを収録する。
半年あたりに損失を出したデイトレーダーの割合
典型的な半年間で、デイトレーダーの10人中8人超が損失を出した。。
効果量未掲載(not_reported)
抄録は「10人中8人超」と記しており、正確な比率も費用控除の前後も特定できないため数値化しない。
過去の成績が良い層の持続性
過去の成績が強かった少数のデイトレーダーは高いリターンを継続し、彼らが買った銘柄は売った銘柄を1日あたり62ベーシスポイント上回った。抄録はこの差が取引費用を賄うのに十分な大きさだったと述べている。。
効果量62 ベーシスポイント/日(gross)
抄録記載の値。買い銘柄と売り銘柄のリターン差であり、個々の投資家の実現損益そのものではない。
効果量は原典の掲載値です。当サイトが再計算したものではなく、将来のリターンを示すものでもありません。
追試の記録
この結果を追試した研究として、当サイトが台帳に持っているレコードです。
- 同一著者が同じ台湾証券取引所の取引記録を1992年から2006年へ延長した後続研究であり、標本が重なるため独立した追試ではない。大多数が損失を出す一方で上位の少数に持続性があるという方向は一致している。 関連研究のレコードを見る
「独立研究」は原典と著者が重ならない研究、「同一著者」は原典の著者を含む研究です。追試の件数は網羅ではありません。
限界
原典の設計上、この結果をそのまま一般化できない条件です。
原典と利用条件
- 著者ページ(UC Berkeley Haas, Terrance Odean)掲載の2004年5月版PDFhttps://faculty.haas.berkeley.edu/odean/papers/Day%20Traders/Day%20Trade%20040330.pdf