自社株の過去リターンへの外挿が401(k)の自社株配分を左右するが、将来リターンは予測しない

Excessive Extrapolation and the Allocation of 401(k) Accounts to Company Stock

Shlomo Benartzi(2001)『The Journal of Finance』

ひとことで言うと

自社株の過去10年のリターンが良い企業ほど、従業員は任意拠出をより多く自社株へ配分するが、その配分は将来のリターンを予測しなかったと報告した研究です。

図で読む:この研究は何を比べたか

群の比較 検証済みの数値

過去10年の株価が良い企業ほど、自社株への配分が増える

過去10年株価不振の企業群

任意拠出の10.37%を自社株に配分した

過去10年の買い持ちリターンで五分位に分けた企業群の、任意拠出に占める自社株配分の比較

過去10年株価好調の企業群

任意拠出の39.70%を自社株に配分した

好調企業群の配分は不振企業群を大きく上回った(抄録記載の10.37%対39.70%)

SECの11-k年次報告書を用い、過去10年の自社株リターンが最も高かった企業群と最も低かった企業群とで、従業員の任意拠出における自社株配分を比較した。配分は将来のリターンを予測しなかった。

利益への距離

観測された差

確認された

SEC提出書類から過去リターンと自社株配分の関係を直接観測した。

取引費用

未確認

配分自体の比較であり、費用控除後の運用成果は比較していない。

再現性

未確認

他企業標本や別期間での独立追試は本レコードでは評価していない。

日本市場

未確認

標本は米国企業であり、日本の制度は対象外。

研究で観測された差は、そのまま得られる利益ではありません。4つの関門はそれぞれ独立に読んでください。

この研究を読み解く

何を知りたかったのか

従業員は401(k)口座の任意拠出をどれだけ自社株へ向けているのか、そしてその配分は過去の株価成績にどこまで引きずられているのか。過去の株価が良かった企業ほど従業員が多く自社株を選ぶとすれば、それは将来の成績を見通した判断なのか、それとも過去を将来へ機械的に外挿した結果なのかを問います。

どうやって調べたのか

米国のS&P500企業のうち、1993年度にSECへ11-k年次報告を提出した401(k)制度を対象に、自社株の保有と拠出配分の情報を集めます。企業を過去1年から過去10年までの買い持ちリターンで五分位に分け、各分位の従業員が任意拠出のうち何パーセントを自社株に配分したかを比較します。あわせて配分を被説明変数、過去リターンや企業規模などを説明変数とする横断面回帰も行い、配分後の自社株の実際のリターンとの関係も確認します。

何が分かったのか

過去10年の株価成績が最も悪かった企業群の従業員は任意拠出の10.37%を自社株に配分したのに対し、最も良かった企業群の従業員は39.70%を配分しました。リターンの形成期間を長くするほど両群の差は広がりました。一方で、自社株への配分の多寡はその後の自社株の株価成績を予測しませんでした。

この結果をどう読めばよいか

結果は、従業員が長期の過去リターンを将来の成績の目安として外挿している可能性と整合的です。ただし配分がその後の株価を予測しなかったことは、その外挿に基づく配分が情報優位を伴わないことを示唆します。標本は米国の大企業に限られ、日本の確定拠出年金や個人の株式保有への当てはめは検証されていません。また、費用控除後の運用成果を比較した研究でもありません。

対象市場
米国
標本期間
1983-011997-12
対象銘柄群
S&P 500構成企業(1993年12月時点)のうち、従業員が任意拠出を自社株に配分できる401(k)型退職貯蓄制度を運営し、1993年度のSEC向け11-k年次報告書を提出した企業。ESOP併用や非普通株のプランなどを除いた後の分析対象は測定指標により136〜154社。過去リターンは1983〜1992年の買い持ちリターンで形成し、配分後の株価成績は1994〜1997年の買い持ちリターンで確認している。
観測頻度
SECへの年次11-k報告に基づく年次断面データ(配分の測定は1993年度時点)
再現性
未評価他企業の標本や別期間、公開市場で株式を購入するプランでの独立追試は本レコードでは評価していない。
日本市場での有効性
未評価米国S&P500企業の401(k)制度データであり、日本の確定拠出年金や証券口座での自社株保有は検証していない。

観測結果

過去10年リターンによる企業群と自社株配分

自社株の過去10年の株価成績が最も悪かった企業群の従業員は任意拠出の10.37%を自社株に配分したのに対し、最も良かった企業群の従業員は39.70%を配分した。

効果量39.7 %(過去10年高リターン企業群の任意拠出中の自社株配分。対照群である低リターン企業群は10.37%)(gross)

抄録に明記された数値。取引費用控除や統計的検定値の記載は抄録になく、本文の表IIIを参照。

自社株配分の将来リターン予測力

自社株への任意拠出配分の多寡は、その後の自社株の株価成績を予測しなかった。

効果量未掲載(not_reported)

抄録はこの一文のみで数値を示していない。本文の表Vでは配分上位群が下位群より翌1年のリターンで下回ったと報告しているが、抄録に記載がないため数値化しない。

効果量は原典の掲載値です。当サイトが再計算したものではなく、将来のリターンを示すものでもありません。

限界

原典の設計上、この結果をそのまま一般化できない条件です。

  • 単一市場
  • 日本市場未検証

原典と利用条件

提供元
other
メタデータライセンス
other
本文再利用
none
原典確認日
2026-08-22
解説の確認範囲
本文まで確認
解説確認日
2026-08-22
レコード更新日
2026-08-22
機械可読レコード
benartzi-2001-company-stock-extrapolation.json