長期の実質利益平均は、将来配当の現在価値を予測した
Stock Prices, Earnings, and Expected Dividends
John Y. Campbell、Robert J. Shiller(1988)『The Journal of Finance』
出版社ページ(DOI、Journal of Finance 43巻3号661-676頁) NBER Working Paper 2511 著者版全文PDF
ひとことで言うと
米国の集計株価を1871年から1986年まで調べ、長期の実質利益平均が将来の実質配当の現在価値をよく予測すると報告した研究です。
図で読む:この研究は何を比べたか
利益平均の重みが大きく、単純な現在価値は棄却される
- 米国集計の年次系列を取る1871年から1986年の実質利益・実質配当・実質株価を使う。
- ベクトル自己回帰で予測する将来の実質配当の現在価値を、利益平均と現在価格から予測する。
- 加重平均の重みを測る最適予測では利益側の重みがおよそ3分の2から4分の3になる。
- 現在価値モデルと比べる対数配当株価比は理論値とほぼ無相関で、年次リターンの変動は2〜4倍。
- 超過変動の含意を示す株価の超過ボラティリティは、長期リターンの予測可能性を直接含意する。
利益への距離
- 観測された差
-
一部のみ
配当の現在価値とリターン変動の観測であり、売買収益そのものは測っていない。
- 取引費用
-
未確認
取引費用や税を差し引いた後の評価は行われていない。
- 再現性
-
未確認
独立標本での追試は本レコードでは評価していない。
- 日本市場
-
未確認
標本は米国集計であり、日本市場は検証されていない。
研究で観測された差は、そのまま得られる利益ではありません。4つの関門はそれぞれ独立に読んでください。
この研究を読み解く
何を知りたかったのか
株価は、これから支払われる配当を割り引いた現在価値に近いのでしょうか。近いなら、いまの株価そのものが将来配当の良い予測になるはずです。ところが長い期間で均した利益の方が、株価よりも将来配当の現在価値をよく説明するなら、単純な現在価値モデルは成り立ちません。この研究はその食い違いを、米国の集計株価で問います。
どうやって調べたのか
1871年から1986年の米国集計株式市場について、実質利益、実質配当、実質株価の年次系列を使います。ベクトル自己回帰で将来の実質配当の現在価値を予測し、その最適予測が、移動平均した実質利益と現在の実質株価の加重平均として表せるかを調べます。あわせて、対数の配当株価比と年次リターンが、単純な現在価値モデルから導かれる理論値とどれだけ対応するかを比べます。
何が分かったのか
長期の実質利益平均は、株価の情報を加味しても、将来の実質配当の現在価値の良い予測になると報告しています。最適予測は移動平均利益と現在実質価格の加重平均で、利益側の重みはおよそ3分の2から4分の3です。単純な現在価値モデルは強く棄却されました。対数配当株価比は理論値より変動が大きくほぼ無相関で、年次リターンは理論値と高い相関を持つ一方、変動は2倍から4倍でした。超過ボラティリティは長期リターンの予測可能性を直接含意すると論じています。
この結果をどう読めばよいか
ここでいう予測は、将来配当の現在価値や長期リターンの統計的な当てはまりであり、どの時点で売買すればよいかを示した結果ではありません。標本は1871年から1986年の米国集計市場で、取引費用や税を差し引いた後の評価はありません。利益平均の重みが大きいことは、株価が配当の現在価値から離れて動く余地を示す観測です。日本市場の集計株価や、その後の期間での再確認はこのレコードでは評価していません。
- 対象市場
- 米国
- 標本期間
- 1871
〜1986 - 対象銘柄群
- 1871年から1986年の米国集計株式市場。実質利益・実質配当・実質株価の年次系列。確認した著者版抄録は aggregate U.S. stock market data 1871-1986 と記す。
- 観測頻度
- annual
- 再現性
- 未評価長期利益平均が将来配当の現在価値を予測するという結果について、独立標本での再現は本レコードでは評価していない。後続のCAPE再検討を内部evidenceとして参照するに留める。
- 日本市場での有効性
- 未評価標本は1871年から1986年の米国集計株式市場であり、日本市場の集計株価での成立はこのレコードでは評価していない。
観測結果
長期実質利益平均の予測
米国集計株価では、長期の実質利益平均が将来の実質配当の現在価値の良い予測になる。株価に含まれる情報を加味しても成り立つ。。
効果量未掲載(not_reported)
原典抄録は方向を述べ、当てはまりの係数や決定係数は示していない。
最適予測の加重
各年の最適予測は、移動平均利益と現在の実質価格の加重平均であり、利益側の重みはおよそ3分の2から4分の3。。
効果量未掲載(not_reported)
原典抄録は between 2/3 and 3/4 と範囲で示しており、単一点推定ではないため数値欄は空欄とする。
現在価値モデルの棄却
単純な現在価値モデルは強く棄却される。。
効果量未掲載(not_reported)
棄却の検定統計量は原典本文を参照。抄録には統計量は示されていない。
対数配当株価比と年次リターン
対数配当株価比は理論値より変動が大きくほぼ無相関。年次リターンは理論値と高い相関を持つが、変動は2倍から4倍。。
効果量未掲載(not_reported)
原典抄録は two to four times as variable と範囲で示しており、単一の倍率ではないため数値欄は空欄とする。
超過ボラティリティの含意
株価の超過ボラティリティは、長期リターンの予測可能性を直接含意する。。
効果量未掲載(not_reported)
含意の方向のみ。予測回帰の係数は抄録に示されていない。
効果量は原典の掲載値です。当サイトが再計算したものではなく、将来のリターンを示すものでもありません。
追試の記録
この結果を追試した研究として、当サイトが台帳に持っているレコードです。
- 同一問題意識の後続。CAPEに入れる利益定義の再検討であり、本研究のベクトル自己回帰や現在価値モデル検定の追試ではない。 関連研究のレコードを見る
「独立研究」は原典と著者が重ならない研究、「同一著者」は原典の著者を含む研究です。追試の件数は網羅ではありません。
限界
原典の設計上、この結果をそのまま一般化できない条件です。
原典と利用条件
- 出版社ページ(DOI、Journal of Finance 43巻3号661-676頁)https://doi.org/10.1111/j.1540-6261.1988.tb04598.x
- NBER Working Paper 2511 著者版全文PDFhttps://www.nber.org/system/files/working_papers/w2511/w2511.pdf