GAAPで測ったCAPEは、将来リターンの見通しを悲観に寄せうる
The Shiller CAPE Ratio: A New Look
Jeremy J. Siegel(2016)『Financial Analysts Journal』
出版社ページ(DOI、Financial Analysts Journal 72巻3号41-50頁) CFA Institute 掲載抄録ページ
ひとことで言うと
米国株のCAPEに使う利益をGAAPからNIPAの税引後企業利益へ替えると、将来リターンの見通しがはっきり高まったと報告した研究です。
図で読む:この研究は何を比べたか
GAAPのCAPEは、見通しを悲観に寄せうる
GAAP利益のCAPE
最近の将来リターン見通しは悲観に寄りすぎる可能性
CAPEに入れる利益の測り方
NIPA税引後企業利益のCAPE
将来リターン見通しははっきり高まる
定義が揃った利益へ替えると予測の当てはまりも上がる
利益への距離
- 観測された差
-
一部のみ
将来リターン見通しの方向の報告であり、売買収益そのものは測っていない。
- 取引費用
-
未確認
取引費用や税を差し引いた後の評価は行われていない。
- 再現性
-
未確認
独立標本での追試は本レコードでは評価していない。
- 日本市場
-
未確認
対象は米国株式であり、日本市場は検証されていない。
研究で観測された差は、そのまま得られる利益ではありません。4つの関門はそれぞれ独立に読んでください。
この研究を読み解く
何を知りたかったのか
長く均した株価収益率、いわゆるCAPEは、長い先の株式リターンを見通す代表的な尺度として使われてきました。会計規則の変更、とくに時価評価の広がりでGAAP利益の計算が昔と今で揃っていないなら、同じCAPEでも最近の見通しだけが悲観に寄りすぎる可能性があります。利益の測り方を揃えると、見通しはどう変わるかを問います。
どうやって調べたのか
確認した出版社抄録には、回帰の係数や標本期間の記載はありません。著者は、時価評価などのGAAP利益の計算変更が、従来のCAPEに使う利益系列を歪めうると考え、GAAP利益の代わりに国民経済計算(NIPA)の税引後企業利益など、定義が揃った利益系列をCAPEの予測モデルへ入れ替えています。対象は米国株式の将来リターンです。期間は抄録に無いため、出版年の2016年で代用しています。
何が分かったのか
抄録によれば、GAAP利益を使う従来のCAPEによる最近の将来リターン見通しは、会計計算の変更のために悲観に寄りすぎている可能性があります。定義が揃った利益、とくにNIPAの税引後企業利益へ入れ替えると、CAPEモデルの予測の当てはまりは上がり、米国株式の将来リターン見通しははっきり高まったと報告しています。効果量や標本期間の数値は、確認した抄録には示されていません。
この結果をどう読めばよいか
利益の測り方を変えると、同じCAPEという枠でも将来リターンの見通しが変わる、という指摘です。どの測り方が正しいか、あるいはいま株式を持つかどうかを決める研究ではありません。確認したのは出版社抄録だけで、回帰の係数、当てはまりの数値、標本の開始年と終了年は原典本文に当たり切れていません。対象は米国株式であり、日本市場での成立はこのレコードでは評価していません。
- 対象市場
- 米国
- 標本期間
- 2016
〜2016 - 対象銘柄群
- 米国株式。CAPEに使う利益としてGAAP利益と、国民経済計算(NIPA)の税引後企業利益などを対比する。確認した出版社抄録に標本期間の記載はなく、期間は出版年で代用している。
- 観測頻度
- 抄録に記載なし
- 再現性
- 未評価GAAP利益をNIPA税引後企業利益へ入れ替えると見通しが変わるという結果について、独立標本での再現は本レコードでは評価していない。CAPEの元研究を内部evidenceとして参照するに留める。
- 日本市場での有効性
- 未評価対象は米国株式のCAPEであり、日本市場の利益系列や会計制度での成立はこのレコードでは評価していない。
観測結果
GAAPに基づく最近の見通し
時価評価などのGAAP利益の計算変更により、従来のCAPEによる最近の将来リターン見通しは悲観に寄りすぎている可能性がある。。
効果量未掲載(not_reported)
確認した出版社抄録に、悲観の幅を表す数値は示されていない。
NIPA利益への入替え
GAAP利益の代わりに、国民経済計算(NIPA)の税引後企業利益など定義が揃った利益を入れると、CAPEモデルの予測の当てはまりは上がる。。
効果量未掲載(not_reported)
当てはまりの改善幅(決定係数など)は確認した抄録に示されていない。
米国株の将来リターン見通し
定義が揃った利益へ入れ替えると、米国株式の将来リターン見通しははっきり高まる。。
効果量未掲載(not_reported)
見通しの上昇幅は確認した抄録に示されていない。increase significantly の方向のみを収録する。
効果量は原典の掲載値です。当サイトが再計算したものではなく、将来のリターンを示すものでもありません。
追試の記録
この結果を追試した研究として、当サイトが台帳に持っているレコードです。
- CAPEの元になった、長期利益平均と将来配当の現在価値を米国集計で調べた研究であり、本研究の利益定義の再検討の追試ではない。 関連研究のレコードを見る
「独立研究」は原典と著者が重ならない研究、「同一著者」は原典の著者を含む研究です。追試の件数は網羅ではありません。
限界
原典の設計上、この結果をそのまま一般化できない条件です。
原典と利用条件
- 出版社ページ(DOI、Financial Analysts Journal 72巻3号41-50頁)https://doi.org/10.2469/faj.v72.n3.1
- CFA Institute 掲載抄録ページhttps://rpc.cfainstitute.org/research/financial-analysts-journal/2016/the-shiller-cape-ratio-a-new-look