レバレッジ型ETFの追跡誤差は、1週間までは小さく、保有期間が延びるほど拡大する
The pricing and performance of leveraged exchange-traded funds
Narat Charupat、Peter Miu(2011)『Journal of Banking & Finance』
ひとことで言うと
カナダ上場のレバレッジ型ETF8本で、純資産価値からの価格乖離と保有期間別の追跡誤差を計測した実証研究。
図で読む:この研究は何を比べたか
保有期間の長さで、追跡誤差の大きさが変わる
1日から1週間
追跡誤差は小さく、表示倍率どおりのリターンにおおむね近い
どれだけの期間、保有し続けるか
1か月以上
ベア型を中心に成績が離れ始め、それより長いほど表示倍率から外れる
保有期間が延びるほど追跡誤差が拡大する
利益への距離
- 観測された差
-
対象外
収益戦略の検証ではなく、価格形成の効率性と追跡誤差を計測した研究である。
- 取引費用
-
未確認
取引費用や税を差し引いた投資家の手取りの評価は示されていない。
- 再現性
-
未確認
独立標本での再現は本レコードでは評価していない。
- 日本市場
-
未確認
標本はカナダ市場の8本であり、日本のレバレッジ型ETFは検証されていない。
研究で観測された差は、そのまま得られる利益ではありません。4つの関門はそれぞれ独立に読んでください。
この研究を読み解く
何を知りたかったのか
レバレッジ型ETFは、指数の日次リターンの倍率を提供すると説明される商品です。では実際の市場価格は純資産価値からどれだけ離れるのでしょうか。そして1日を超えて持ち続けたとき、実際のリターンは表示倍率からどこまでずれていくのでしょうか。この研究はその二つを実データで確かめます。
どうやって調べたのか
カナダ市場に上場したレバレッジ型ETF30本のうち、最初に設定された8本を対象に、設定日から2009年9月30日までの日次データを使います。カナダでは同じベンチマークにレバレッジ型と非レバレッジ型が1本ずつ対応するため、比較がしやすい構造です。価格乖離は終値と純資産価値の差の比率として計算し、追跡誤差は1日・1週間・1か月・四半期・1年の各保有期間のリターンをベンチマーク・リターンへ回帰して推定します。
何が分かったのか
レバレッジ型ETFは主に個人の短期売買で取引され、非レバレッジ型より保有期間が短く1取引あたりの金額も小さいことがわかりました。純資産価値からの乖離は平均では小さいものの大きなプレミアムやディスカウントが生じやすく、ブル型は平均でディスカウントか小幅のプレミアム、ベア型はより大きなプレミアムという違いが出ています。追跡誤差は1週間までは小さく、1か月ではベア型を中心に離れ始めました。
この結果をどう読めばよいか
短い保有期間では表示倍率どおりに機能し、長く持つほど乖離が積み上がるという、商品設計そのものの性質を計測した研究です。プレミアムの挙動が引け際のリバランスと整合的だと述べる一方、著者らはその確認にはさらなる研究が必要としています。標本はカナダ市場の8本であり、日本のレバレッジ型ETFや、取引費用・税を差し引いた投資家の手取りは対象に含まれていません。
- 対象市場
- その他
- 標本期間
- 2007
〜2009-09 - 対象銘柄群
- カナダ市場に上場したレバレッジ型ETFのうち最初に設定された8本(BetaPro Management運用)と、同じベンチマークに連動する非レバレッジ型ETF。各ファンドの設定日から2009年9月30日までを対象とする。
- 観測頻度
- daily
- 再現性
- 未評価カナダ上場のレバレッジ型ETF8本で観測された価格乖離と保有期間別の追跡誤差について、独立標本での再現は本レコードでは評価していない。
- 日本市場での有効性
- 未評価標本はカナダ市場に上場したレバレッジ型ETFであり、日本のレバレッジ型ETF(1570等)は検証対象に含まれていない。
観測結果
取引の担い手と保有期間
レバレッジ型ETFは主に個人の短期売買で取引され、同じベンチマークの非レバレッジ型ETFと比べて保有期間が短く、1取引あたりの金額も小さい。。
効果量未掲載(not_reported)
出版社ページの本文抜粋では平均保有期間は15日未満と記されている。単一の効果量としては収録せず、水準は原典の表を参照。
純資産価値からの価格乖離
終値の純資産価値からの乖離は平均では小さいが、大きなプレミアムやディスカウントが生じやすい。ブル型は平均でディスカウントか小幅のプレミアム、ベア型はより大きなプレミアムという違いがある。。
効果量未掲載(not_reported)
出版社ページの本文抜粋では、プレミアムと自ベンチマークのリターンの相関の絶対値は0.24から0.58の範囲と記されている。個別の水準は原典の表を参照。
保有期間別の追跡誤差
追跡誤差は1週間までの保有期間では小さく、表示倍率どおりのリターンをおおむね実現するが、1か月ではベア型を中心に成績が離れ始め、1か月を超えると実際のリターンが表示倍率から大きく外れる。。
効果量未掲載(not_reported)
保有期間別のリターンをベンチマーク・リターンへ回帰した推定であり、効果量は原典の表定義を参照。
引け際のリバランスとの整合性
プレミアムがブル型で自ベンチマークのリターンと負に、ベア型で正に相関するという結果は、ファンドのエクスポージャーの引け際リバランスが取引終了時のボラティリティを高めるという主張と整合的である。。
効果量未掲載(not_reported)
著者らはこの主張の確認にはさらなる研究が必要と述べており、因果関係は検証されていない。
効果量は原典の掲載値です。当サイトが再計算したものではなく、将来のリターンを示すものでもありません。
追試の記録
この結果を追試した研究として、当サイトが台帳に持っているレコードです。
- レバレッジ型ETFのリターンの経路依存性を定式化した先行研究であり、本研究のカナダ市場での価格乖離・追跡誤差の実証の追試ではない。 関連研究のレコードを見る
「独立研究」は原典と著者が重ならない研究、「同一著者」は原典の著者を含む研究です。追試の件数は網羅ではありません。
限界
原典の設計上、この結果をそのまま一般化できない条件です。
原典と利用条件
- 出版社ページ(ScienceDirect)https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0378426610003444
- 出版社ページ(DOI)https://doi.org/10.1016/j.jbankfin.2010.09.012