米国株式市場全体でアクティブ運用に投じられる費用を集計した研究
Presidential Address: The Cost of Active Investing
Kenneth R. French(2008)『The Journal of Finance』
ひとことで言うと
米国株式市場の投資家全体がアクティブ運用に費やす費用を集計し、全員がパッシブ運用に切り替えた場合との差を推計した研究です。
図で読む:この研究は何を比べたか
パッシブに投資した場合と、投資家全体の実際の費用を比べる
全員がパッシブ運用の場合
市場平均のリターンをそのまま得られ、探索費用は発生しない
米国株式市場全体、1980〜2006年平均
投資家全体の実際の姿(アクティブ運用込み)
手数料・経費・売買コストとして市場時価総額の0.67%を毎年負担
パッシブへ全員が切り替えれば平均年間リターンが67ベーシスポイント向上すると試算
利益への距離
- 観測された差
-
確認された
米国株式市場全体の集計データで費用の方向と規模を確認した。
- 取引費用
-
確認された
手数料・経費・売買コストそのものを対象とした費用集計であり、これ自体が費用測定である。
- 再現性
-
未確認
独立した追試や標本外での再現は本レコードでは評価していない。
- 日本市場
-
未確認
日本市場のデータは対象外であり検証していない。
研究で観測された差は、そのまま得られる利益ではありません。4つの関門はそれぞれ独立に読んでください。
この研究を読み解く
何を知りたかったのか
個々の投資家ではなく市場全体で見たとき、優れた銘柄選択やタイミングを狙うアクティブ運用に投資家はどれだけの費用を支払っているのか。全員がインデックスに連動するパッシブ運用へ切り替えた場合、その費用はどれだけ削減できるのかを問います。
どうやって調べたのか
米国株式市場の投資信託、ヘッジファンド、機関投資家勘定、個人投資家の直接売買などを対象に、手数料・経費・売買コストを1980年から2006年にかけて集計し、市場時価総額に対する比率として算出します。全員がパッシブに投資した場合にかかる費用と比較することで、アクティブ運用に伴う超過費用を推計します。
何が分かったのか
1980年から2006年の平均で、投資家全体は市場時価総額の0.67%を毎年、超過リターンの探索に費やしていました。社会全体の価格発見コストを資本化すると現在の市場時価総額の少なくとも10%に達し、合理的な仮定のもとでは、典型的な投資家がパッシブな市場ポートフォリオへ切り替えることで平均年間リターンが67ベーシスポイント向上すると試算されました。
この結果をどう読めばよいか
この研究は集計レベルでの費用比較であり、特定のファンドや個人の運用成績を保証するものではありません。市場全体でアクティブ運用が生む超過収益の合計は、それを得るための費用と同程度かそれ以下になりやすいという負のサム的な構造を示しますが、個々の投資家や運用者がこの平均を上回る可能性を否定するものではありません。米国市場のデータに基づく推計であり、日本市場や他国市場への直接の当てはめは検証されていません。
- 対象市場
- 米国
- 標本期間
- 1980〜2006
- 対象銘柄群
- 米国株式市場に投資する投資信託・ヘッジファンド・機関投資家勘定・個人投資家の直接売買を含む投資家全体
- 観測頻度
- annual
- 再現性
- 未評価独立した追試や標本外での再現研究を本レコードでは評価していない。
- 日本市場での有効性
- 未評価米国株式市場を対象とした集計研究であり、日本市場のデータは用いていないため未評価。
観測結果
市場全体がアクティブ運用の探索に費やす年間費用
米国株式市場の投資家全体が、超過リターンを求める活動のために市場時価総額に対して毎年支出する割合。
効果量0.67 %(市場時価総額に対する年率、1980〜2006年平均)(gross)
抄録に明記された1980年から2006年の平均値。手数料・経費・売買コストの合計を市場時価総額に対する比率として示したもの。
価格発見の資本化コストの下限
社会全体が価格発見(市場を効率化する活動)に投じる費用を資本化した額の、現在の市場時価総額に対する下限。
効果量10 %(現在の市場時価総額に対する下限)(gross)
抄録は「少なくとも10%」という下限値のみを報告し、上限は示していない。
パッシブ切替による典型的投資家の増分リターン
典型的な投資家がパッシブな市場ポートフォリオへ切り替えた場合に増える平均年間リターン。
効果量67 ベーシスポイント/年(1980〜2006年平均、合理的な仮定のもとでの試算)(net_of_costs)
抄録記載の推定値。運用費用の差から生じる費用控除後の増分であり、税・流動性制約等は考慮されていない前提付きの試算である。
効果量は原典の掲載値です。当サイトが再計算したものではなく、将来のリターンを示すものでもありません。
限界
原典の設計上、この結果をそのまま一般化できない条件です。
原典と利用条件
- 出版社ページ(DOI)https://doi.org/10.1111/j.1540-6261.2008.01368.x
- 著者原稿(SSRNワーキングペーパーのTulane大学講義サイト経由ミラー)https://breesefine7110.tulane.edu/wp-content/uploads/sites/16/2015/10/The-Cost-of-Active-Investing-French.pdf