株式プレミアム予測は、標本外では歴史平均を上回らない
A Comprehensive Look at The Empirical Performance of Equity Premium Prediction
Ivo Welch、Amit Goyal(2008)『Review of Financial Studies』
ひとことで言うと
配当比率や金利など既報の予測変数を同じ手順で再検討し、標本内も標本外もこの30年は歴史平均を上回らなかったと報告した研究です。
図で読む:この研究は何を比べたか
予測変数は標本外で歴史平均を上回るか
文献の株式プレミアム予測変数
同じ手順で標本内推定
多くはすでに標本内でも弱い
手元情報だけの標本外
歴史平均を上回らないものが多い
1975年以降に絞る
標本外で上回ったモデルはなかった
安定して残る予測は少ない
石油ショックへの依存と不安定さが目立つ
利益への距離
- 観測された差
-
確認された
米国プレミアムの予測回帰で、標本内・標本外の方向を観測している。
- 取引費用
-
未確認
取引費用や税を差し引いたあとの評価は行われていない。
- 再現性
-
一部のみ
同一著者の2024年延長は混在結果であり、独立追試ではない。
- 日本市場
-
未確認
日本市場の標本は用いておらず、本レコードでは評価していない。
研究で観測された差は、そのまま得られる利益ではありません。4つの関門はそれぞれ独立に読んでください。
この研究を読み解く
何を知りたかったのか
配当価格比、金利スプレッド、消費・資産・所得比率など、論文が株式プレミアムの予測に使えるとしてきた変数は、同じ推定と期間で並べると標本内でも残るか。手元の情報だけを使う投資家が、歴史平均より良いタイミング判断に使えるかを問います。
どうやって調べたのか
被説明変数は株式の超過収益率です。S&P500の配当込み収益から短期金利を引き、年次を基本に月次と5年も調べます。全標本は1872年から2005年、月次は1927年からです。各変数の予測回帰を最小二乗で推定し、その時点までのデータだけで作る転がり予測を、その時点までの歴史平均と比べます。標本外はデータ開始の20年後、1965年開始、1927年以降のみ、の三通りです。
何が分かったのか
抄録は、概してこれらのモデルは標本内でも標本外でもこの30年は予測が弱く、不安定で、手元情報だけの投資家の市場タイミングには使えなかったと述べます。本文は、多くのモデルの見かけの有意性が1973年から1975年の石油ショックに依存し、2005年末時点では標本内も標本外も有意性を失い、1975年以降に標本外で歴史平均を上回ったモデルはなかったと記します。
この結果をどう読めばよいか
観測しているのは予測回帰が歴史平均を上回るかであり、費用や税を引いたあとの投資成果ではありません。対象は米国の市場全体のプレミアムで、日本株や個別銘柄の横断面ではありません。後続の2024年論文は同一著者グループが2021年末まで延長した再検討であり、独立した別標本の追試ではありません。期間の切り方や石油ショックの扱いを変えれば、個別変数の見え方は変わります。
- 対象市場
- 米国
- 標本期間
- 1872
〜2005 - 対象銘柄群
- 米国S&P500の配当込み収益から短期金利を引いた株式プレミアム。予測変数は配当・利益比率、発行、簿価時価、分散、金利・スプレッド、インフレ、投資・資本比率、消費・資産・所得比率など。抄録に期間の記載はなく、期間は本文データ節の全標本(1872–2005)による。年次の原系列は1871年まで遡れるが、プレミアム系列は1872年から。月次は1927年から。変数ごとに開始年は異なる。
- 観測頻度
- annual
- 再現性
- 結果混在後続2024年論文は同一著者グループが2021年末まで延長した再検討であり、独立した追試ではない。元論文自体も、多くは標本外で歴史平均を上回らない側の結果である。
- 日本市場での有効性
- 未評価米国の市場全体のプレミアムを対象としており、日本市場の標本は用いていない。本レコードでは評価していない。
観測結果
標本内・標本外の予測性能
既報の予測モデルは、標本内でも標本外でもこの30年は予測が弱く不安定だった。
効果量未掲載(not_reported)
抄録の定性結果。統一できる効果量は示されていない。
石油ショックへの依存
以前の見かけの有意性は、1973–1975年の石油ショックに依存することが多かった。
効果量未掲載(not_reported)
本文の診断。ショック期を除くと多くのモデルの成績はさらに弱い。
1975年以降の標本外
1975年以降に標本外で歴史平均を上回ったモデルはなかった。
効果量未掲載(not_reported)
本文結論。年次またはそれより短い頻度で、標本内と標本外がともに安定して残るモデルは見つからなかったと記す。
配当価格比の直近30年
1976–2005年の配当価格比による標本外R2。
効果量-15.14 %(not_reported)
本文が示す一例であり全体結論ではない。同じ期間の標本内R2は-4.80%、全期間の標本外R2は-2.06%。
効果量は原典の掲載値です。当サイトが再計算したものではなく、将来のリターンを示すものでもありません。
追試の記録
この結果を追試した研究として、当サイトが台帳に持っているレコードです。
- 同一著者グループによる2021年末までの延長再検討であり、独立した追試ではない。 関連研究のレコードを見る
「独立研究」は原典と著者が重ならない研究、「同一著者」は原典の著者を含む研究です。追試の件数は網羅ではありません。
限界
原典の設計上、この結果をそのまま一般化できない条件です。
原典と利用条件
- 出版社ページ(DOI)https://doi.org/10.1093/rfs/hhm014
- Tulane大学コースページ(掲載版全文PDF)https://breesefine7110.tulane.edu/wp-content/uploads/sites/16/2015/10/Goyal-and-Welch-2008.pdf
- 著者ページ掲載の掲載版PDFhttps://www.ivo-welch.org/research/journalcopy/goyal2008comprehensive.pdf