2008年以降の新予測変数も、延長標本では多くが弱まる
A Comprehensive 2022 Look at the Empirical Performance of Equity Premium Prediction
Amit Goyal、Ivo Welch、Athanasse Zafirov(2024)『The Review of Financial Studies』
ひとことで言うと
2008年論文の17変数に加え、その後26本の29変数を2021年末まで延長し、新変数の3分の1超は標本内でも残らず、残ったものの半分は標本外が弱いと報告した研究です。
図で読む:この研究は何を比べたか
延長しても標本内と標本外に残るか
新29変数と原17変数
原標本で単変量再現
1本を除きほぼ再現できた
2021年末まで前方延長
13変数は標本内予測力を失った
揃えた仕様と標本外
残った10のうち標本外も残ったのは4
両方残るのは少数
タイミング運用で常時株式を上回ったのは3変数
利益への距離
- 観測された差
-
確認された
延長標本での標本内・標本外の件数と方向を本文が報告している。
- 取引費用
-
未確認
取引費用や税を差し引いたあとの評価は行われていない。
- 再現性
-
一部のみ
同一著者の延長再検討であり、独立した別標本の追試ではない。
- 日本市場
-
未確認
日本市場の標本は用いておらず、本レコードでは評価していない。
研究で観測された差は、そのまま得られる利益ではありません。4つの関門はそれぞれ独立に読んでください。
この研究を読み解く
何を知りたかったのか
2008年以降に一流誌へ載った株式プレミアムの新予測変数は、発見時の標本を含めたまま2021年末まで延ばすと、標本内の有意性を保つか。手元情報だけの転がり予測でも歴史平均を上回るか、単純なタイミング運用が常時株式保有を上回るかを問います。
どうやって調べたのか
引用100件以上などの条件で選んだ26本・29変数を、原論文の標本で単変量の予測回帰によりほぼ再現したうえで、金融市場の収益を2021年12月まで前方延長します。入手できる場合は後方にも延ばします。同じ対数プレミアム・重複なし・本来の頻度という揃えた仕様で標本内と、負のプレミアム予測を禁じた標本外を測り、傾斜の有無と規模調整の有無を組み合わせた四つの単純なタイミング運用も比べます。
何が分かったのか
本文は、29変数を2021年まで延ばすと13変数は標本内予測力を失い、29変数中t統計量が改善したのは9変数(31%)だったと記します。揃えた仕様ではさらに3変数が標本内で落ち10変数が残り、そのうち標本外も残ったのはテクニカル指標、空売り残高、発生主義項目、第4四半期個人消費伸びの4変数でした。単純なタイミング運用で常時株式保有を統計的に上回ったのは3変数に限られました。
この結果をどう読めばよいか
延長は原論文の発見標本を捨てておらず、独立した別標本の追試ではありません。残った変数も、発生主義項目は2000年前後の一局面に依存するなど、安定性は一様ではありません。費用控除後の運用成果や日本市場は調べていません。著者自身も、2021年末までのデータから前方のプレミアムをどの変数が予測するかは判断できない、と結んでいます。
- 対象市場
- 米国
- 標本期間
- 1926-01
〜2021-12 - 対象銘柄群
- 米国の幅広い株価指数(多くはS&P500またはCRSP)の株式プレミアム。2008年論文の原17変数に加え、その後26本の29変数を再検討する。抄録は2021年末までとだけ述べ、開始年は変数ごとに異なる。本文Table 1に繰り返し現れる1926年1月–2021年12月を共通窓として代用する。原論文の標本終了は2000–2017年で、前方に典型的には約10年足す。原17変数の一部は1872年まで遡る。
- 観測頻度
- monthly(四半期・年次を含む)
- 再現性
- 結果混在2008年論文と同一著者グループによる延長再検討であり、独立研究者の別標本追試ではない。新変数の一部は標本内・標本外とも残る一方、3分の1超は標本内でも残らず、結果は混在する。
- 日本市場での有効性
- 未評価米国の市場全体のプレミアムを対象としており、日本市場の標本は用いていない。本レコードでは評価していない。
観測結果
延長後に標本内予測力を失った変数
2021年まで延ばすと標本内予測力を失った変数の数。
効果量13 変数(not_reported)
本文。29変数を再構成し、年次2本の7–6月版を足して31とした直後の記述。抄録は新変数の3分の1超と述べ、件数は書いていない。
延長でt統計量が改善した新変数
29の新変数のうち、延長標本でt統計量が改善した数。
効果量9 変数(29中、31%)(not_reported)
本文が9変数、すなわち31%と記す。残り69%は悪化した。
揃えた仕様で標本内と標本外が残った新変数
相同仕様で残った10変数のうち、OOSCTも残った数。
効果量4 変数(not_reported)
本文。テクニカル指標、空売り残高、発生主義項目、第4四半期個人消費伸び。原17からはT-bill、投資・資本比率、株式発行も残ったと記す。
単純タイミングが常時株式保有を上回った変数
四つの単純なタイミング運用で常時株式保有を統計的に上回った変数の数。
効果量3 変数(not_reported)
本文。発生主義項目、第4四半期個人消費伸び、鉱工業生産伸び。t統計量はそれぞれ1.31、1.54、1.35。費用控除後ではない。
効果量は原典の掲載値です。当サイトが再計算したものではなく、将来のリターンを示すものでもありません。
追試の記録
この結果を追試した研究として、当サイトが台帳に持っているレコードです。
- 同一著者グループによる延長再検討。独立研究者の別標本追試ではない。 関連研究のレコードを見る
「独立研究」は原典と著者が重ならない研究、「同一著者」は原典の著者を含む研究です。追試の件数は網羅ではありません。
限界
原典の設計上、この結果をそのまま一般化できない条件です。
原典と利用条件
- 出版社ページ(DOI)https://doi.org/10.1093/rfs/hhae044
- 出版社の全文ページhttps://academic.oup.com/rfs/article/37/11/3490/7749383
- 出版社PDF(CC-BY-NC)https://academic.oup.com/rfs/article-pdf/37/11/3490/59762851/hhae044.pdf
- 著者ページ掲載の掲載版PDFhttps://www.ivo-welch.org/research/journalcopy/goyal2024comprehensive.pdf