追証の担保要件は、信用取引の期待リターンを負にする
Losing money on the margin
Daniel Ladley、Guanqing Liu、James Rockey(2020)『Journal of Economic Behavior & Organization』
出版社ページ(DOI) University of Birmingham 研究ポータル University of Leicester Discussion Paper 16-06(旧題 Margin Trading: Hedonic Returns and Real Losses)
ひとことで言うと
追証の担保要件が信用取引の期待リターンを負にし、宝くじ株に似た正の歪度を生むと示した理論・実証研究。
図で読む:この研究は何を比べたか
追証の担保要件が、期待リターンを負にする
- 追証の担保要件を定式化信用取引に課される追証(マージンコール)の担保要件を理論モデルとして定式化する。
- 期待リターンへの影響を導く担保要件により信用取引の期待リターンが理論的に負になると導く。
- リターン分布への影響を導くリターン分布に正の歪度が生じ、宝くじ株や他の賭けに似た性質を持つと示す。
- 中国の口座データで実証個人向け証券会社の口座データベースを用い、信用取引を行った投資家の実現損失を確認する。
利益への距離
- 観測された差
-
支持されない
追証の担保要件は期待リターンを負にし、実現損失もしばしば大きいと報告されている。
- 取引費用
-
未確認
取引費用や税を差し引いた後の評価は抄録に示されていない。
- 再現性
-
未確認
独立標本での追試は本レコードでは評価していない。
- 日本市場
-
未確認
標本は中国の口座データであり、日本の信用取引制度は検証されていない。
研究で観測された差は、そのまま得られる利益ではありません。4つの関門はそれぞれ独立に読んでください。
この研究を読み解く
何を知りたかったのか
信用取引には損失の拡大を防ぐため、規制当局が担保要件と追証(マージンコール)の仕組みを課しています。この仕組みは投資家保護のために設計されていますが、逆に投資家の期待リターンやリターン分布の形をどう変えているのでしょうか。この研究はその影響を理論と実証の両面から問います。
どうやって調べたのか
まず、追証が発動する仕組みを理論モデルとして定式化し、担保要件が信用取引の期待リターンとリターン分布の形(歪度)にどう影響するかを導きます。対称的なリターンを持つ資産を信用取引した場合の性質を、宝くじ株や他の賭けと比較します。次に、中国の個人向け証券会社が保有する口座データベースを用いて、信用取引を行った投資家が実際にどれだけの損失を被ったかを回帰分析で確認します。
何が分かったのか
理論分析では、追証の担保要件によって信用取引の期待リターンが負になる一方、リターン分布には正の歪度が生じると導かれました。これは、損失が限定される一方でまれに大きな利益が出るという、宝くじ株や他の賭けに似た性質です。中国の口座データを用いた実証でも、信用取引を行った投資家の実現損失はしばしば大きかったと報告されています。著者らはこの結果から、現行の規制が適切かを問い直しています。
この結果をどう読めばよいか
信用取引そのものを否定する研究ではなく、担保要件という規制の設計が投資家のリターン構造をどう変えるかを示した研究です。標本は中国の個人向け証券会社の口座データであり、日本の信用取引の制度(金利、追証の発動基準、規制水準)とは異なるため、数値をそのまま日本市場へ当てはめることはできません。取引費用や税を差し引いた後の評価も抄録には示されていません。
- 対象市場
- その他
- 標本期間
- 未確認(確認した一次資料(出版社抄録)に標本期間の記載がないため未確認)
- 対象銘柄群
- 中国の個人向け証券会社の口座データベース。
- 観測頻度
- not_applicable
- 再現性
- 未評価追証の担保要件が期待リターンを負にするという理論的結果、および中国の口座データでの実証結果について、独立標本での再現は本レコードでは評価していない。
- 日本市場での有効性
- 未評価標本は中国の個人向け証券会社の口座データであり、日本の信用取引制度での成立は評価していない。
観測結果
主要な観測結果
追証(マージンコール)が課す担保要件により、信用取引の期待リターンは理論的に負になる一方、リターン分布には正の歪度が生じ、宝くじ株や他の賭けに似た性質を持つ。中国の個人向け証券会社の口座データを用いた実証でも、信用取引を行う投資家の実現損失はしばしば大きいと確認された。。
効果量未掲載(not_reported)
期待リターンの負の大きさや歪度の水準は抄録に示されておらず、方向のみを収録する。
効果量は原典の掲載値です。当サイトが再計算したものではなく、将来のリターンを示すものでもありません。
追試の記録
この結果を追試した研究として、当サイトが台帳に持っているレコードです。
- 先物ブローカーの取引データでレバレッジと成績の関係を分析した関連研究であり、本研究の追証の担保要件に関する理論・実証の追試ではない。 関連研究のレコードを見る
「独立研究」は原典と著者が重ならない研究、「同一著者」は原典の著者を含む研究です。追試の件数は網羅ではありません。
限界
原典の設計上、この結果をそのまま一般化できない条件です。
原典と利用条件
- 出版社ページ(DOI)https://doi.org/10.1016/j.jebo.2020.01.027
- University of Birmingham 研究ポータルhttps://research.birmingham.ac.uk/en/publications/losing-money-on-the-margin
- University of Leicester Discussion Paper 16-06(旧題 Margin Trading: Hedonic Returns and Real Losses)https://www.le.ac.uk/economics/research/RePEc/lec/leecon/dp16-06.pdf