個人投資家は損失を確定するのを避けるか
Are Investors Reluctant to Realize Their Losses?
Terrance Odean(1998)『The Journal of Finance』
ひとことで言うと
米国の個人口座で、含み益の銘柄は売りやすい一方、含み損の銘柄は保有し続けやすい処分効果を確認した研究です。
図で読む:この研究は何を比べたか
利益は実現しやすく損失は持ち続けやすい
利益銘柄
売却機会に対する実現割合が高い
各売却日に売却できた利益銘柄と損失銘柄を分母に比較
損失銘柄
保有し続けやすく12月には税目的売却が目立つ
利益と損失で売却判断が非対称だった
利益への距離
- 観測された差
-
確認された
実口座の取引記録で処分効果を観測した。
- 取引費用
-
一部のみ
手数料を判定に含むが投資戦略全体の費用控除後比較ではない。
- 再現性
-
未確認
独立追試は未評価。
- 日本市場
-
未確認
日本の口座は対象外。
研究で観測された差は、そのまま得られる利益ではありません。4つの関門はそれぞれ独立に読んでください。
この研究を読み解く
何を知りたかったのか
個人投資家は売却できる利益銘柄と損失銘柄の機会を考慮しても、利益を先に確定し、損失の確定を遅らせるか。その行動はリバランス、取引費用、売却後の成績で合理化できるかを問います。
どうやって調べたのか
大手ディスカウント証券会社から無作為に選ばれた1万口座の1987年から1993年の取引記録を用います。各売却日に実現した利益・損失と、売却可能だった含み益・含み損を数え、利益と損失の実現割合を比較します。
何が分かったのか
投資家は損失銘柄より利益銘柄を強く実現しました。この差はリバランスや低価格株の取引費用では説明されず、売られた利益銘柄は保有された損失銘柄をその後も上回りました。課税口座では税引後収益を下げると報告されました。
この結果をどう読めばよいか
この結果は「持ち続ければ有利」という一般則ではありません。むしろ損失銘柄を長く抱える偏りも含みます。一証券会社の米国個人口座と当時の税制に基づくため、日本の制度や指数商品、保有継続全般の成果へは直接移せません。
- 対象市場
- 米国
- 標本期間
- 1987-01〜1993-12
- 対象銘柄群
- 米国の大手ディスカウント証券会社で取引した個人口座1万件
- 観測頻度
- transaction
- 再現性
- 未評価他市場や別口座標本での追試は本レコードでは評価していない。
- 日本市場での有効性
- 未評価米国の一証券会社の個人口座であり、日本の口座や税制は検証していない。
観測結果
利益と損失の実現
投資家は損失銘柄より利益銘柄を強く実現する傾向を示した。
効果量未掲載(net_of_costs)
出版社抄録の方向を掲載。売買手数料は原文の取得価格と売却価格の判定に反映されるが、単一の効果量は収録していない。
売却後の成績
売却された利益銘柄は保有された損失銘柄をその後も上回り、行動は将来成績では正当化されなかった。
効果量未掲載(not_reported)
抄録の定性結果のみを掲載する。
効果量は原典の掲載値です。当サイトが再計算したものではなく、将来のリターンを示すものでもありません。
限界
原典の設計上、この結果をそのまま一般化できない条件です。
原典と利用条件
- Wiley出版社ページhttps://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/0022-1082.00072
- 著者ページ掲載PDFhttps://faculty.haas.berkeley.edu/odean/Papers%20current%20versions/AreInvestorsReluctant.pdf