米国発の『4%ルール』は先進17カ国の長期データでも安全と言えるかを検証した研究
An International Perspective on Safe Withdrawal Rates: The Demise of the 4 Percent Rule?
Wade D. Pfau(2010)『Journal of Financial Planning』
出版社(Financial Planning Association機関誌)公式サイト掲載PDF全文(実務誌のためDOI未登録)
ひとことで言うと
先進17カ国109年分のデータで検証すると、日本を含む多くの国で米国発の『4%引き出しルール』は安全ではなかったことを示した研究です。
図で読む:この研究は何を比べたか
同じ手法でも国で分かれた安全な引き出し率
米国
SAFEMAX 4.02%(1969年退職、17カ国中4位)
完全予見・手数料控除前のSAFEMAX基準で計算した30年維持可能引き出し率の国別比較
日本
SAFEMAX 0.47%(1940年退職、17カ国中最低)
同じ手法でも国によって安全な引き出し率は大きく異なった
利益への距離
- 観測された差
-
確認された
17カ国のDMSデータで各国のSAFEMAXを直接計算した。
- 取引費用
-
未確認
運用管理費用は意図的に控除しておらず、控除後の引き出し率は未検証。
- 再現性
-
未確認
独立した第三者による追試は本レコードでは評価していない。
- 日本市場
-
確認された
日本を標本に含み、SAFEMAXが17カ国中最低の0.47%だったと直接観測した。
研究で観測された差は、そのまま得られる利益ではありません。4つの関門はそれぞれ独立に読んでください。
この研究を読み解く
何を知りたかったのか
退職後にポートフォリオを取り崩しながら暮らす場合、毎年資産残高の4%を物価連動で引き出しても30年間資金が尽きないという『4%ルール』は、米国以外の国でも成り立つのか。日本を含む17カ国の長期データで確認します。
どうやって調べたのか
Dimson・Marsh・Stauntonが集めた1900年から2008年までの109年分の株式・債券・短期金融資産・物価データを17カ国について用い、1900年から1979年までの各年に退職したと仮定した延べ1,360通りの退職シナリオを再現しました。各国・各退職年について、その後30年間の引き出し率を最大化する資産配分を事後的に選べたと仮定する『完全予見』のもとで、30年間資金が尽きなかった最大の引き出し率(SAFEMAX)を計算しています。
何が分かったのか
完全予見という有利な仮定を置いてもなお、17カ国中SAFEMAXが4%を超えたのはカナダ・スウェーデン・デンマーク・米国の4カ国だけでした。米国は4.02%(1969年退職者)で17カ国中4位、日本は0.47%(1940年退職者)で17カ国中最低となり、4%引き出しでも30年のうち最短3年で資金が尽きる結果でした。
この結果をどう読めばよいか
手数料控除前かつ将来を見通せたという有利な仮定のもとでの計算であり、実際の投資家が得られる引き出し率はこれより低くなり得ます。世界大戦期の落ち込みが日本やドイツの低い数値に強く影響しており、同じ落ち込みが繰り返されない保証もありません。それでも、米国のデータだけに基づく4%ルールを日本の退職者へそのまま当てはめることには慎重であるべきだと示唆します。
- 対象市場
- グローバル
- 標本期間
- 1900〜2008
- 対象銘柄群
- 先進17カ国(米国・カナダ・英国・オーストラリア・南アフリカ・日本と欧州10カ国)の株式・債券・短期金融資産・物価指数(DMSデータ)。1900〜1979年に退職したと想定した17カ国×80年=1,360通りの退職シナリオ
- 観測頻度
- annual
- 再現性
- 未評価本研究はBengen(2006a)の手法を17カ国データへ拡張したものであり、独立した第三者による追試は本レコードでは評価していない。
- 日本市場での有効性
- 支持されず日本を含む17カ国のDMSデータ(1900〜2008年)を直接標本として使用した研究。日本のSAFEMAXは0.47%(1940年退職者、17カ国中最低)となり、米国データを基準とした4%引き出し率は日本の標本には当てはまらなかった。
観測結果
17カ国中4%超はわずか4カ国
完全予見の資産配分選択という有利な仮定のもとでも、SAFEMAX(30年間資金が尽きなかった最大引き出し率)が4%を超えたのはカナダ・スウェーデン・デンマーク・米国の4カ国のみだった。
効果量4 カ国(分母17カ国)(gross)
手数料控除前・完全予見という有利な仮定のもとでの結果。株式・債券・短期金融資産を組み合わせた固定配分をとる。
米国のSAFEMAX
米国の30年維持可能引き出し率(SAFEMAX)は4.02%(1969年退職者のケース)で、17カ国中4位だった。
効果量4.02 %(実質、税・手数料控除前)(gross)
完全予見の資産配分選択という有利な仮定のもとでの数値。
日本のSAFEMAX
日本の30年維持可能引き出し率(SAFEMAX)は0.47%(1940年退職者のケース)で、17カ国中最低だった。
効果量0.47 %(実質、税・手数料控除前)(gross)
1940年退職者は4%引き出しでも30年のうち最短3年で資金が尽きた(4%引き出し時の失敗率37.5%)。完全予見・手数料控除前という有利な仮定のもとでの結果。
効果量は原典の掲載値です。当サイトが再計算したものではなく、将来のリターンを示すものでもありません。
限界
原典の設計上、この結果をそのまま一般化できない条件です。
原典と利用条件
- 出版社(Financial Planning Association機関誌)公式サイト掲載PDF全文(実務誌のためDOI未登録)https://www.financialplanningassociation.org/sites/default/files/2021-10/DEC10%20JFP%20Pfau%20PDF.pdf