昇給時に貯蓄率を自動で引き上げる仕組みは従業員の貯蓄率をどこまで押し上げたか
Save More Tomorrow™: Using Behavioral Economics to Increase Employee Saving
Richard H. Thaler、Shlomo Benartzi(2004)『Journal of Political Economy』
ひとことで言うと
昇給のたびに貯蓄率を自動で引き上げる「Save More Tomorrow」プログラムに参加した従業員の平均貯蓄率が、導入から40か月間で3.5%から13.6%へ上昇したと報告した研究です。
図で読む:この研究は何を比べたか
昇給に連動させた自動的な貯蓄率引き上げ
プログラム参加前
平均貯蓄率3.5%
SMarTプログラムへの参加
導入から40か月後
平均貯蓄率13.6%(参加者のうち80%が4回目の昇給まで継続)
利益への距離
- 観測された差
-
確認された
プログラムを最初に導入した企業の給与・拠出金の管理データで参加率・継続率・貯蓄率の変化を観測した。
- 取引費用
-
未確認
投資対象の運用成果や費用控除後リターンは比較していない。
- 再現性
-
未確認
最初に導入した企業群という単一の事例報告であり、独立した企業・標本での追試は評価していない。
- 日本市場
-
未確認
日本の企業年金や証券口座は対象外。
研究で観測された差は、そのまま得られる利益ではありません。4つの関門はそれぞれ独立に読んでください。
この研究を読み解く
何を知りたかったのか
従業員が将来の昇給の一部をあらかじめ貯蓄率引き上げへ充てることに同意する「SMarT」プログラムを提案されたとき、実際にどれだけの人が参加し、参加を続け、貯蓄率がどう変化するかを問います。
どうやって調べたのか
SMarTプログラムを最初に導入した米国企業の給与・拠出金の管理データを用い、プログラムを提案された従業員のうち参加した割合、参加者のうち4回の昇給を経てもとどまった割合、参加前後の平均貯蓄率を追跡します。
何が分かったのか
提案を受けた従業員の78%がプログラムに参加し、そのうち80%が4回目の昇給までプログラムにとどまりました。参加者の平均貯蓄率は、導入から40か月間で3.5%から13.6%へ上昇したと報告されています。
この結果をどう読めばよいか
貯蓄率の引き上げを将来の昇給時点に紐づけることで、手取り額が今すぐ減るという心理的抵抗を避けやすくする制度設計が、高い参加率・継続率・貯蓄率上昇と結びついたことを示す事例です。ただし最初に導入した企業群という単一の事例報告であり、対象企業数や参加者の属性、投資対象の運用成果、他企業への一般化可能性は抄録の範囲では確認できません。日本の企業年金や個人の証券口座への直接適用も検証していません。
- 対象市場
- 米国
- 標本期間
- 未確認(確認した出版社抄録には暦年としての標本期間の記載がなく、SMarTプログラム導入後「4回の昇給(約40か月間)」という経過期間のみが示されているため、開始・終了年を確認できない)
- 対象銘柄群
- SMarTプログラムを最初に導入した米国企業(実装数・企業規模は抄録に記載なし)でプログラムを提案された従業員
- 観測頻度
- administrative
- 再現性
- 未評価SMarTプログラムを最初に導入した企業群という単一の事例に基づく報告であり、独立した企業・標本での再現は本レコードでは評価していない。同じ退職貯蓄の初期設定・制度設計を扱う関連研究を内部evidenceとして参照するに留める。
- 日本市場での有効性
- 未評価米国企業でのSMarTプログラム導入事例であり、日本の企業年金やiDeCo・NISA等の制度は検証していない。
観測結果
参加率
SMarTプログラムへの参加を提案された従業員のうち実際に参加した割合。
効果量78 %(提案を受けた従業員のうち)(not_reported)
出版社抄録に記載された参加率をそのまま掲載する。
継続率
参加した従業員のうち4回目の昇給までプログラムにとどまった割合。
効果量80 %(参加者のうち、4回目の昇給まで)(not_reported)
出版社抄録に記載された継続率をそのまま掲載する。
平均貯蓄率の変化
SMarTプログラム参加者の平均貯蓄率の導入前後の変化。
効果量13.6 %(導入から40か月後の水準。導入前は3.5%)(not_reported)
抄録は「導入から40か月間で平均貯蓄率が3.5%から13.6%へ上昇した」と報告する。上昇幅の差分計算はここでは行わず、両時点の値をそのまま掲載する。
効果量は原典の掲載値です。当サイトが再計算したものではなく、将来のリターンを示すものでもありません。
追試の記録
この結果を追試した研究として、当サイトが台帳に持っているレコードです。
- 同じ米国401(k)制度の行動変容を扱うが、自動加入という別の制度設計を検証した研究であり、本研究の追試ではない。 関連研究のレコードを見る
「独立研究」は原典と著者が重ならない研究、「同一著者」は原典の著者を含む研究です。追試の件数は網羅ではありません。
限界
原典の設計上、この結果をそのまま一般化できない条件です。
原典と利用条件
- 出版社ページ(DOI経由)https://www.journals.uchicago.edu/doi/abs/10.1086/380085
- UCLA Anderson著者ページ(PDF)https://www.anderson.ucla.edu/documents/areas/fac/accounting/smartjpe226.pdf