結論

値動きの大きさについては観測されています。ただしリターンの平均については、先行研究が TOPIXで示したW字型は日経平均・日経225先物では確認されなかったと報告されており、 同じ標本でも測る対象によって結果が分かれています。

日経225を直接の標本として日中の値動きを調べた研究は、台帳に2本あります。 いずれも時間帯ごとに値動きの荒さが違うという型を報告していますが、 リターンの平均に同じ型が現れるかどうかについては、報告が分かれています。

Andersen, Bollerslev & Cai (2000) は、日本経済新聞社から提供された日経225現物指数の 分単位データを5分間隔へ集計し、1994年1月2日から1997年12月31日までの984取引日、 1日53本、合計52,152本の収益率を分析しました。夜間情報の反映で変動が突出する 09:00〜09:05の初回収益率は除外されています。5分収益率の絶対値の平均は、前場と後場 それぞれの始まりと終わりで高く中盤で低く、昼休みの直前と直後の上昇が加わることで、 一日の中に二つのU字が並ぶ二重U字型のパターンが現れました。当時の東証の昼休みは 11:00から12:30です。

同じ研究は、日中の強い周期成分を取り除くと、日をまたぐ長期記憶型のボラティリティ依存が 確認されたことも報告しています。一方、識別しやすい日本のマクロ経済統計の公表は、 日々のボラティリティ変動をほとんど説明しませんでした。

Yoshikawa (2001) は、日経平均株価と大阪証券取引所の日経225先物の分刻みデータを用い、 1988年10月3日から1994年9月8日までの1,472営業日を15分区間ごとに集計しました。 リターンの標準偏差については、他の日本市場の先行研究と同様にW字型のパターンが 確認されています。

ここが読み分けの要点です。同じ研究は、リターンについては先行研究がTOPIXで報告した W字型は確認されなかったと報告しています。例外として、前場寄り付きのリターンは正で 絶対値が大きく、月曜・火曜の先物だけが別の挙動を示しました。つまり、値動きの荒さに 時間帯の型が現れることと、リターンの平均に時間帯の型が現れることは、同じ標本でも 別の結果になっています。

  • 値動きの大きさ(絶対収益率・標準偏差)については、前場・後場それぞれの寄り付きと引けで大きくなる型が、日経225を標本とする2本の研究で報告されている
  • リターンの平均については、TOPIXで示されたW字型は日経平均・日経225先物では確認されなかったと報告されている
  • 標本は1988年から1997年であり、その後の取引時間・制度変更のもとでの再確認は台帳では行われていない
  • どの時間帯にどう売買すれば費用を差し引いた後に何が残るかは、いずれの研究でも検証されていない

変動が大きい時間帯が特定されていることと、その時間帯に売買した結果がどうなるかは 別の問いです。後者を検証した研究は台帳にありません。台帳の2本が測っているのは 値動きの分布であり、売買による収益ではありません。

参照した研究

限界

標本は1994年から1997年の日経225現物指数(5分足)と、1988年から1994年の日経平均株価・ 日経225先物(分足)であり、その後の取引時間・制度変更のもとでの再確認は台帳に無い。 取引費用や税を差し引いた後の評価は、いずれの研究でも行われていない。日本のレバレッジ型 ETF(1570等)は、いずれの標本にも含まれていない。