日経平均のリターンにW字型は現れず、ボラティリティにはW字型が現れた
Intraday Price Behavior of the Nikkei Stock Average and the Nikkei 225 Futures
Masahiro Yoshikawa(2001)『証券経済研究(日本証券経済研究所)第33号 17-54頁』
ひとことで言うと
日経平均と日経225先物の分刻みデータで、日中の値動きの形と現物・先物の先行遅行関係を調べた研究です。
図で読む:この研究は何を比べたか
リターンとボラティリティで、形の出方が分かれる
平均リターン
W字型は確認されず、前場寄り付きだけが突出する
日中パターンを何で測るか
リターンの標準偏差
先行研究と同様にW字型が確認される
測る対象によって同じ日中パターンが現れるとは限らない
利益への距離
- 観測された差
-
対象外
本研究は日中の値動きと先行遅行関係の観測であり、売買による収益は測定していない。
- 取引費用
-
未確認
取引費用や税を差し引いた後の評価は行われていない。
- 再現性
-
未確認
独立標本での追試は本レコードでは評価していない。
- 日本市場
-
確認された
標本は日経平均株価と大阪証券取引所の日経225先物そのものである。
研究で観測された差は、そのまま得られる利益ではありません。4つの関門はそれぞれ独立に読んでください。
この研究を読み解く
何を知りたかったのか
米国株ではボラティリティが一日一つのU字を描くと報告されてきましたが、日本株ではW字型が報告されてきました。TOPIXで示されたこの形は、日経平均株価と日経225先物にも当てはまるのでしょうか。また、現物と先物のどちらが先に動くのかも問われます。
どうやって調べたのか
1988年10月3日から1994年9月8日までの1,472営業日について、日経平均株価と大阪証券取引所の日経225先物の分刻み値を用います。15分区間ごとに平均リターン、標準偏差、歪度、尖度を集計し、リターンの反転も調べます。先行遅行関係は自己相関、重回帰、45次のベクトル自己回帰で推定し、先物規制が緩やかだった391営業日と厳しかった469営業日、さらに曜日別に標本を分けて比較します。
何が分かったのか
リターンについては先行研究がTOPIXで示したW字型は確認されず、前場寄り付きだけが正で大きな絶対値を示しました。一方、リターンの標準偏差にはW字型が現れました。オーバーナイトでは現物リターンが絶対値で先物を上回り、標準偏差では現物の方が小さくなりました。先行遅行関係は全期間では現物・先物ともに15分前後で同程度でしたが、規制が緩やかだった期間では先物が現物を強く先行しています。
この結果をどう読めばよいか
報告されているのは時間帯ごとの値動きの荒さと、二つの市場の情報反映の速さの違いです。どの時間帯にどう売買すれば費用を差し引いた後に何が残るかは検証されていません。標本は1988年から1994年で、当時は前場が11:00まで、後場の開始が13:00または12:30でした。証拠金率や特別気配の規制も期間中に何度も変わっており、著者自身も先行遅行関係にはさらなる検討が必要としています。
- 対象市場
- 日本
- 標本期間
- 1988-10-03
〜1994-09-08 - 対象銘柄群
- 日経平均株価(東証1部225銘柄からなる株価平均型指数)と大阪証券取引所上場の日経225先物の分刻みデータ。全期間は1,472営業日。現物の日中データは1991年4月22日以前が9:01〜11:00と13:01〜15:00の240本、以後は9:01〜11:00と12:31〜15:00の270本。先物は規制変更に伴い取引時間が複数回変わり、1日272本から252本、282本、272本へ推移した。部分期間として非規制期間(1989年1月30日〜1990年8月23日、391営業日)と規制期間(1992年3月23日〜1994年2月10日、469営業日)、および月曜から金曜の曜日別標本を分析している。
- 観測頻度
- 1min
- 再現性
- 未評価W字型のボラティリティ・パターンと現物先物のリード・ラグについて、独立標本での再現は本レコードでは評価していない。標本期間の異なる日本市場の関連研究を内部evidenceとして参照するに留める。
- 日本市場での有効性
- 支持標本は日経平均株価と大阪証券取引所の日経225先物そのものであり、報告された日中パターンとリード・ラグは日本市場の標本で直接観測されている。ただし1988〜1994年の観測であり、その後の取引時間・証拠金・特別気配の制度変更のもとでの再確認はこのレコードでは行っていない。
観測結果
リターンの日中パターン
先行研究がTOPIXで報告したW字型は、リターンについては確認されなかった。ただし前場寄り付きのリターンは正で絶対値が大きく、月曜・火曜の先物だけが例外だった。。
効果量未掲載(not_reported)
15分区間ごとの平均リターンは原典のTable 1以降を参照。効果量は本レコードでは採録していない。
ボラティリティの日中パターン
リターンの標準偏差については、他の日本市場の先行研究と同様にW字型のパターンが確認された。。
効果量未掲載(not_reported)
時間帯ごとの標準偏差の水準は原典の表を参照。効果量は本レコードでは採録していない。
オーバーナイトの現物と先物の違い
オーバーナイトの現物リターンは、絶対値で先物のオーバーナイト・リターンを上回った。一方、オーバーナイト・リターンの標準偏差は現物の方が先物より小さかった。。
効果量未掲載(not_reported)
差の大きさは原典の表を参照。両者の閉場時刻の違いなどが要因として論じられている。
現物と先物のリード・ラグ
全期間では現物と先物の先行・遅行関係はほぼ同程度(15分前後)だったが、非規制期間では先物が現物を強く先行した。規制期間では規制の効果と先物市場の成熟の効果が入り混じり、著者は解釈にさらなる検討が必要としている。。
効果量未掲載(not_reported)
自己相関、重回帰、ベクトル自己回帰で推定した有意なラグ数は原典のTable 5〜Table 12を参照。
効果量は原典の掲載値です。当サイトが再計算したものではなく、将来のリターンを示すものでもありません。
追試の記録
この結果を追試した研究として、当サイトが台帳に持っているレコードです。
- 1994〜1997年の日経225現物5分足で前場・後場それぞれのU字(二重U字型)を報告した研究であり、本研究の1988〜1994年の分刻み分析の追試ではない。 関連研究のレコードを見る
- 2006〜2019年の日経225現物と大阪・シンガポール先物の価格調整を扱った関連研究であり、本研究のリード・ラグ推定の追試ではない。 関連研究のレコードを見る
「独立研究」は原典と著者が重ならない研究、「同一著者」は原典の著者を含む研究です。追試の件数は網羅ではありません。
限界
原典の設計上、この結果をそのまま一般化できない条件です。
原典と利用条件
- 日本証券経済研究所 掲載ページhttps://www.jsri.or.jp/publication/periodical/economics/33/33-02/
- 日本証券経済研究所 全文PDFhttps://www.jsri.or.jp/publish/research/pdf/33/33_02.pdf