結論

結果は割れています。損切り・利確ルールの価値は、リターンの改善ではなくリスクの削減側に寄って報告されています。分割して利確する手法そのものを検証した研究は台帳にありません。

含み益の出ている建玉を、価格の動きに応じて段階的に手放していく分割利確は、実務でよく語られる手法です。研究検証台帳に収録した出口ルールの実証・理論研究は、この手法そのものを直接検証したものではありません。近い性質を持つ損切り・トレーリングストップの研究があります。

Kaminski & Lo (2014) は、損切りルールが期待リターンへ与える影響が、対象の価格過程の性質(ランダムウォークか、モメンタムがあるか)に依存する条件つきの結果を示しました。無条件に「効く」ルールではなく、条件によって符号が変わるという枠組みです。

Dai, Marshall, Nguyen & Visaltanachoti (2021) は、高値の上昇に合わせて発動水準を引き上げるトレーリングストップを米国株の長期データで検証し、平均リターンではベンチマークに劣後する一方、総リスクと下方リスク(損失側だけを見たリスク)は低下したと報告しています。

  • リターンを高めたかという問いへの答えは、研究間で向きが一致していない
  • リスク(損失の幅・変動)を抑えたかという問いへの答えは、扱った研究のあいだでおおむね方向が揃う
  • 取引費用を差し引いた後まで検証した研究は少なく、扱った場合も条件つきの答えが多い

いずれも「分割して利確する」という手法そのものを対象とした検証ではなく、損切り・トレーリングストップという関連する出口ルールの研究です。手法の推奨としてではなく、近縁のルールが何を報告しているかとして読んでください。

参照した研究

限界

いずれも米国市場の標本であり、日本市場、レバレッジ型商品、信用取引の金利・諸費用は検証の対象に含まれていない。分割して利確する手法そのものを検証した研究は台帳にない。