短期の反転は低流動性・高回転の銘柄で最も大きいが、逆張り利益は取引費用に届かない
Liquidity and Autocorrelations in Individual Stock Returns
Doron Avramov、Tarun Chordia、Amit Goyal(2006)『Journal of Finance』
出版社ページ(DOI) 著者ページ(Amit Goyal)で公開されている出版版PDF 著者ページ(Amit Goyal, University of Lausanne)
ひとことで言うと
NYSE・AMEX株の1962年から2002年を対象に、短期の反転が非流動性と強く結び付く一方、逆張り利益は想定される取引費用を下回ると報告した研究。
図で読む:この研究は何を比べたか
反転は起きるが、費用が利益を上回る
直近の敗者を買い勝者を売る逆張り戦略
回転率と非流動性で銘柄を分ける
高回転かつ低流動性の銘柄で、最大の反転と最大の潜在利益が観測された。
想定される取引費用を差し引く
逆張り戦略の利益は、想定される取引費用より小さいと報告された。
短期反転による効率性の逸脱は限定的
著者らは、結果が合理的均衡の枠組みと整合的であり、効率的市場仮説からの逸脱は深刻ではないと結論している。
利益への距離
- 観測された差
-
確認された
高回転かつ低流動性の銘柄で、週次・月次の反転が観測されている。
- 取引費用
-
支持されない
逆張り戦略の利益は、想定される取引費用より小さいと報告されている。
- 再現性
-
一部のみ
同じ論点を再検証した研究は、大型株と低回転の構築では逆の結論を報告している。
- 日本市場
-
未確認
標本は米国のNYSE・AMEX株であり、日本市場は検証されていない。
研究で観測された差は、そのまま得られる利益ではありません。4つの関門はそれぞれ独立に読んでください。
この研究を読み解く
何を知りたかったのか
株価が1週間や1か月という短い期間で下げた後に戻る「短期の反転」は古くから知られています。ではその反転はどんな銘柄で大きく、なぜ起きるのでしょうか。そして反転を取りにいく逆張り戦略の利益は、実際に売買したときにかかる費用を差し引いた後も残るのでしょうか。この研究は両方を同時に問います。
どうやって調べたのか
NYSEとAMEXに上場する株式について、1962年から2002年までの週次・月次リターンを用います。流動性の低さはAmihud(2002)の指標、すなわち1日の売買代金あたりの絶対価格変化の平均で測ります。回転率と非流動性で銘柄を分けたうえで、リターンの系列相関と、過去の敗者を買い勝者を売る逆張り戦略の損益を推定し、市場インパクトを含む取引費用の推定値と比較します。
何が分かったのか
反転は週次でも月次でも観測されましたが、過去のリターンが負だった敗者側に偏っていました。週次では回転率の高い銘柄ほど負の系列相関が強く、非流動性の高い銘柄ほど反転が大きくなります。最大の反転と最も大きな潜在利益は、高回転かつ低流動性の銘柄で生じました。ただし著者らは、その逆張り戦略の利益は想定される取引費用より小さいと報告しています。
この結果をどう読めばよいか
反転が起きる場所と、その反転から利益を取り出せるかは別の問題だと示した研究です。著者らは、即時性を求める非情報的な売買が価格を押し、流動性の供給者がそれを受け止める過程として反転を説明し、結果は合理的均衡の枠組みと整合的だと述べています。標本はNYSE・AMEXの米国株であり、日本市場での成立は検証されていません。費用の推定条件が変われば結論も変わり得ます。
- 対象市場
- 米国
- 標本期間
- 1962
〜2002 - 対象銘柄群
- NYSE・AMEX上場株。流動性はAmihud(2002)の非流動性指標で測り、週次と月次の双方で分析している。
- 観測頻度
- 週次・月次
- 再現性
- 結果混在費用控除前の反転が非流動性と結び付くという観測は後続研究でも扱われているが、費用控除後に利益が残るかについては、母集団と構築法の条件によって結論が分かれている。
- 日本市場での有効性
- 未評価標本はNYSE・AMEX上場の米国株であり、日本市場や日経225関連商品での成立は評価していない。
観測結果
主要な観測結果
短期の反転(負の系列相関)は株式の非流動性と強く関係し、取引高を制御した後も残る。最大の反転と、逆張り戦略から得られる潜在的な利益は、高回転かつ低流動性の銘柄で生じている。。
効果量未掲載(gross)
反転の大きさと潜在利益の水準は抄録に数値で示されておらず、方向のみを収録する。効果量は原典の表定義を参照。この段階の利益は取引費用を差し引く前の水準である。
取引費用を差し引いた場合
逆張り戦略の潜在的な利益は、想定される取引費用より小さいと報告されている。。
効果量未掲載(net_of_costs)
抄録は大小関係のみを述べ、費用控除後の水準を数値で示していない。費用の推定方法と水準は原典を参照。
市場効率性への含意
利益が費用に届かないことと、全体の結果が合理的均衡の枠組みと整合的であることから、短期反転による効率的市場仮説からの逸脱は深刻ではないと結論している。。
効果量未掲載(not_reported)
著者らの解釈であり、効果量ではない。判断の根拠は原典本文を参照。
効果量は原典の掲載値です。当サイトが再計算したものではなく、将来のリターンを示すものでもありません。
追試の記録
この結果を追試した研究として、当サイトが台帳に持っているレコードです。
- 同じ論点を別の標本で再検証した研究であり、小型株を含む広い母集団では本研究と同じく費用控除後に利益が残らないと確認する一方、大型株に限定し回転率を抑えた構築では費用控除後も正の利益が残ると報告し、結論が分かれている。 関連研究のレコードを見る
- 大手機関投資家の実売買データから取引費用を推定し、短期リバーサル戦略の容量制約を検討したワーキングペーパーであり、本研究の推定の追試ではない。 関連研究のレコードを見る
「独立研究」は原典と著者が重ならない研究、「同一著者」は原典の著者を含む研究です。追試の件数は網羅ではありません。
限界
原典の設計上、この結果をそのまま一般化できない条件です。
原典と利用条件
- 出版社ページ(DOI)https://doi.org/10.1111/j.1540-6261.2006.01060.x
- 著者ページ(Amit Goyal)で公開されている出版版PDFhttps://drive.google.com/file/d/1O6zwAGmh8N1oMtjTzW946EXA-VfnQZ7Z/view
- 著者ページ(Amit Goyal, University of Lausanne)https://sites.google.com/view/agoyal145