大型株に絞り回転率を抑えると、短期反転の利益は費用控除後も残ると報告した研究
Another look at trading costs and short-term reversal profits
Wilma de Groot、Joop Huij、Weili Zhou(2012)『Journal of Banking & Finance』
出版社ページ(DOI) RePub(Erasmus University Rotterdam 機関リポジトリ) RePub掲載の受理原稿PDF(2011年7月稿)
ひとことで言うと
米国株と欧州株を対象に、大型株へ限定し回転率を抑えれば短期反転の利益が費用控除後も週30〜50ベーシスポイント残ると報告した研究。
図で読む:この研究は何を比べたか
母集団と回転率で、費用控除後の結論が変わる
小型株を含む広い母集団
反転利益は想定される取引費用を下回り、費用控除後に残らない。
どの銘柄群を、どれだけ頻繁に売買するか
大型株+低回転の構築
抄録では費用控除後に週30〜50ベーシスポイントの利益が残ると報告。
費用の条件が結論を分けており、反転の有無だけでは決まらない
利益への距離
- 観測された差
-
確認された
短期反転そのものは、米国株・欧州株の双方で観測されている。
- 取引費用
-
確認された
抄録は費用控除後で週30〜50ベーシスポイントの利益を報告している。
- 再現性
-
一部のみ
費用控除後に残るかは母集団と費用前提で結論が分かれている。
- 日本市場
-
未確認
標本は米国株と欧州株であり、日本市場は検証されていない。
研究で観測された差は、そのまま得られる利益ではありません。4つの関門はそれぞれ独立に読んでください。
この研究を読み解く
何を知りたかったのか
短期の値動きは反転しますが、その反転を取りにいく戦略は売買回数が多く、費用がかさみます。先行研究の多くは、取引費用を差し引くと利益が消えると報告してきました。では、その消失は反転という現象そのものの限界なのか、それとも売買の対象と組み替え方の問題なのでしょうか。
どうやって調べたのか
1990年1月から2009年12月までの米国株と欧州株を対象に、時価総額の区分ごとに反転戦略の損益を測ります。取引費用は、この分野で広く使われるKeim–Madhavan(1997)モデルの推定値に加えて、野村證券から提供を受けた四半期ごとの推定値も用います。さらに、順位から外れた銘柄をただちに入れ替えず上位・下位50パーセントに入るまで保有し続ける構築法を適用し、回転率と費用の変化を比べます。
何が分かったのか
小型株を含む広い母集団では、標準的な反転戦略の利益は想定される取引費用を下回りました。一方、最も大きい米国株に絞ると費用の影響は大きく下がり、回転率を抑える構築法を併用すると費用はさらに下がります。抄録は、この条件で費用控除後に週30〜50ベーシスポイントの反転利益が得られると報告しています。欧州株では費用の影響がより大きく、広い母集団では費用控除後の成績が大きく負になったと述べています。
この結果をどう読めばよいか
費用控除後に何が残るかは、反転という現象の有無ではなく、どの銘柄群をどれだけ頻繁に売買するかで決まるという主張です。数値は米国株・欧州株の1990年から2009年の標本と、特定の費用推定モデルに依存しており、費用の前提が変われば結論も変わります。日本市場や日経225関連商品での成立、および個人が負担する手数料・貸株料・税の条件は検証されていません。
- 対象市場
- 米国・欧州
- 標本期間
- 1990-01
〜2009-12 - 対象銘柄群
- 米国株(S&P1500構成銘柄を中心とする時価総額区分別の母集団)と欧州株。取引費用はKeim–Madhavan(1997)モデルの推定値と、野村證券から提供された四半期ごとの推定値を用いている。
- 観測頻度
- 週次
- 再現性
- 結果混在費用控除後に反転利益が残るかは、母集団(大型株か小型株を含むか)、回転率、費用推定の前提によって結論が分かれており、独立標本で一様に再現された状態ではない。
- 日本市場での有効性
- 未評価標本は米国株と欧州株であり、日本市場での成立は評価していない。
観測結果
費用控除後の反転利益(抄録記載の下限)
反転戦略が生み出す取引費用控除後の利益の下限として抄録が示した週次の水準。。
効果量30 ベーシスポイント/週(net_of_costs)
抄録は費用控除後の利益を週30〜50ベーシスポイントの幅で示しており、その下限を収録している。どの母集団・構築法で達成されたかの条件は原典本文を参照。
費用控除後の反転利益(抄録記載の上限)
反転戦略が生み出す取引費用控除後の利益の上限として抄録が示した週次の水準。。
効果量50 ベーシスポイント/週(net_of_costs)
抄録が示した幅の上限。回転率を下げる構築法を併用した場合の水準として原典本文で説明されている。
費用の影響が生じる場所
反転戦略の収益性に対する取引費用の影響は、小型株を過度に売買することに大きく起因すると報告している。銘柄群を大型株に限定すると取引費用は大きく下がり、回転率を抑える構築法を適用するとさらに下がる。。
効果量未掲載(net_of_costs)
抄録は方向のみを述べ、費用の低下幅を数値で示していない。区分ごとの水準は原典の表定義を参照。
資産価格モデルへの含意
費用控除後にも有意な反転利益が残ることは、標準的な合理的資産価格モデルに対する深刻な課題になると述べている。。
効果量未掲載(not_reported)
著者らの解釈であり効果量ではない。判断の根拠は原典本文を参照。
効果量は原典の掲載値です。当サイトが再計算したものではなく、将来のリターンを示すものでもありません。
追試の記録
この結果を追試した研究として、当サイトが台帳に持っているレコードです。
- 小型株を含む広い母集団では反転利益が想定される取引費用を下回るという先行研究の結果を確認する一方、大型株に限定し回転率を抑えた構築では費用控除後も正の利益が残ると報告し、結論が分かれている。 関連研究のレコードを見る
- 大手機関投資家の実売買データから費用を推定し、短期リバーサルは相応の規模では費用控除後に成立しにくいと報告したワーキングペーパーであり、実行可能性の評価が分かれている。 関連研究のレコードを見る
「独立研究」は原典と著者が重ならない研究、「同一著者」は原典の著者を含む研究です。追試の件数は網羅ではありません。
限界
原典の設計上、この結果をそのまま一般化できない条件です。
原典と利用条件
- 出版社ページ(DOI)https://doi.org/10.1016/j.jbankfin.2011.07.015
- RePub(Erasmus University Rotterdam 機関リポジトリ)https://repub.eur.nl/pub/25718
- RePub掲載の受理原稿PDF(2011年7月稿)https://repub.eur.nl/pub/25718/AnotherLook_2011.pdf