持続する評価倍率の予測力は、通常のt検定では判定しにくい

Efficient tests of stock return predictability

John Y. Campbell、Motohiro Yogo(2006)『Journal of Financial Economics』

ひとことで言うと

配当株価比や平滑化利益株価比が将来リターンを予測するかは、指数PERの同時点の高低とは別の問いであり、持続性に頑健な検定で調べた研究です。

図で読む:この研究は何を比べたか

仕組みの経路 方向のみ・数値なし

持続する評価倍率では、通常のt検定を先に疑う

  1. 予測回帰を置く一期前の評価倍率や金利変数で、翌期の超過リターンを回帰する。
  2. 持続性と相関を測る予測変数の自己回帰根と、撹乱がリターンとどれだけ相関するかを測る。
  3. 通常のt検定を事前検定評価倍率では通常のt検定が過大棄却になると判定する。
  4. 頑健なQ検定で判定するBonferroniのQ検定で予測係数の信頼区間を作る。
  5. 変数と頻度で結果が分かれる利益株価比は各頻度で予測を支持し、配当株価比は年次に限る。
配当株価比と平滑化利益株価比は持続性が高く、通常のt検定は使えないと事前検定で判定し、頑健なQ検定で予測回帰を調べた構成です。

利益への距離

観測された差

確認された

米国指数の予測回帰で、棄却の有無が変数と頻度ごとに報告されている。

取引費用

未確認

取引費用を差し引いた後の成績は検証していない。

再現性

未確認

独立標本での追試は本レコードでは評価していない。

日本市場

未確認

日本市場の評価倍率や指数は検証していない。

研究で観測された差は、そのまま得られる利益ではありません。4つの関門はそれぞれ独立に読んでください。

この研究を読み解く

何を知りたかったのか

配当株価比や平滑化した利益株価比は、指数全体のPERが今高いか安いかという同時点の関係ではなく、過去の評価倍率がその後のリターンを予測するかを問う変数です。予測変数が強く持続し、その撹乱がリターンと強く相関するとき、通常のt検定は帰無仮説を棄却しすぎることがあります。この歪みを補正した検定では、予測可能性はどう判定されるのでしょうか。

どうやって調べたのか

米国の年次・四半期・月次で、将来の超過リターンを一期前の予測変数へ回帰します。対象はCRSPのNYSE/AMEX時価加重指数と、平滑化利益株価比に用いるS&P500です。期間は抄録に無く、到達全文の導入と第4節の1926–2002年を代用しました。予測変数の最大自己回帰根の信頼区間で通常のt検定が使えるかを事前検定し、使えない場合はBonferroniのQ検定で予測係数を判定します。

何が分かったのか

抄録では、通常のt検定は配当株価比と平滑化した利益株価比では使えないが、提案した検定では予測の証拠があると述べています。到達全文では、1926–2002年で平滑化した利益株価比は年次・四半期・月次のいずれでも予測を支持し、配当株価比は年次では支持、四半期と月次では帰無を棄却できないと報告しています。短期金利と長短スプレッドでは通常のt検定が使え、予測の証拠もあると抄録は述べています。

この結果をどう読めばよいか

観測しているのは評価倍率の時系列予測回帰であり、ある時点の指数PERが高いから株価が同時に高い・安いといった同時点相関ではありません。予測可能性は変数と頻度で分かれ、費用を差し引いた売買成績や日本市場の指数は検証していません。1952年以降では配当株価比の判定が、自己回帰根を1以下と置くかどうかに依存すると本文は述べています。

対象市場
米国
標本期間
19262002
対象銘柄群
CRSPのNYSE/AMEX時価加重指数の超過リターンと対数配当株価比、S&P500の平滑化(過去10年)利益株価比。年次・四半期・月次。期間は抄録に無く、到達全文の導入と第4節の1926–2002年を代用した。金利変数(短期金利・長短スプレッド)は1952–2002年の副標本。年次S&P500は1871–2002年の系列も用いる。
観測頻度
monthly
再現性
未評価持続性に頑健な予測検定の独立標本での再現は、本レコードでは評価していない。
日本市場での有効性
未評価標本は米国指数の時系列であり、日本市場の評価倍率や指数PERへの適用は本レコードでは評価していない。

観測結果

通常のt検定の適用範囲

配当株価比と平滑化した利益株価比では、通常のt検定による推論が成立しないと判定した。短期金利と長短スプレッドでは通常のt検定が使えると判定した。。

効果量未掲載(not_reported)

抄録の定性結果。持続性と撹乱相関が高いときの過大棄却が理由。効果量は収録していない。

評価倍率の予測可能性

提案した検定では、平滑化した利益株価比は年次・四半期・月次で予測を支持し、配当株価比は年次では支持、四半期と月次では帰無を棄却できなかった。。

効果量未掲載(not_reported)

頻度別の分かれは到達全文の導入と第4.3節。抄録は予測の証拠があると述べるが頻度は書いていない。

金利変数の予測可能性

短期金利と長短スプレッドでも予測の証拠があり、これらでは通常のt検定による推論が使えると報告した。。

効果量未掲載(not_reported)

抄録の定性結果。本文は1952–2002年の副標本。数値の効果量は抄録に無い。

従来の片側t検定の有限標本棄却率

名目5%の片側t検定が、持続性が高く撹乱相関が大きいときに実際に棄却する割合。

効果量27.2 %(観測数250、ρ=0.992、δ=-0.95)(not_reported)

到達全文第3.6節・表3のモンテカルロ。市場リターンの効果量ではなく、検定のサイズ歪みの一例。

効果量は原典の掲載値です。当サイトが再計算したものではなく、将来のリターンを示すものでもありません。

追試の記録

この結果を追試した研究として、当サイトが台帳に持っているレコードです。

  • 独立研究分野背景 既報アノマリーの横断再現であり、本論文の予測検定の追試ではない。分野の文脈参照に留める。 関連研究のレコードを見る

「独立研究」は原典と著者が重ならない研究、「同一著者」は原典の著者を含む研究です。追試の件数は網羅ではありません。

限界

原典の設計上、この結果をそのまま一般化できない条件です。

  • 単一市場
  • 日本市場未検証
  • 標本内のみ
  • 取引コスト控除前

原典と利用条件

提供元
publisher
メタデータライセンス
other
本文再利用
none
原典確認日
2026-08-13
解説の確認範囲
本文まで確認
解説確認日
2026-08-13
レコード更新日
2026-08-13
機械可読レコード
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