持続する評価倍率の予測力は、通常のt検定では判定しにくい
Efficient tests of stock return predictability
John Y. Campbell、Motohiro Yogo(2006)『Journal of Financial Economics』
出版社ページ(DOI。Journal of Financial Economics 81巻1号 27-60頁) 掲載誌体裁の著者配布PDF(University of Houston講義資料) ペンシルベニア大学リポジトリ(2005年9月草稿)
ひとことで言うと
配当株価比や平滑化利益株価比が将来リターンを予測するかは、指数PERの同時点の高低とは別の問いであり、持続性に頑健な検定で調べた研究です。
図で読む:この研究は何を比べたか
持続する評価倍率では、通常のt検定を先に疑う
- 予測回帰を置く一期前の評価倍率や金利変数で、翌期の超過リターンを回帰する。
- 持続性と相関を測る予測変数の自己回帰根と、撹乱がリターンとどれだけ相関するかを測る。
- 通常のt検定を事前検定評価倍率では通常のt検定が過大棄却になると判定する。
- 頑健なQ検定で判定するBonferroniのQ検定で予測係数の信頼区間を作る。
- 変数と頻度で結果が分かれる利益株価比は各頻度で予測を支持し、配当株価比は年次に限る。
利益への距離
- 観測された差
-
確認された
米国指数の予測回帰で、棄却の有無が変数と頻度ごとに報告されている。
- 取引費用
-
未確認
取引費用を差し引いた後の成績は検証していない。
- 再現性
-
未確認
独立標本での追試は本レコードでは評価していない。
- 日本市場
-
未確認
日本市場の評価倍率や指数は検証していない。
研究で観測された差は、そのまま得られる利益ではありません。4つの関門はそれぞれ独立に読んでください。
この研究を読み解く
何を知りたかったのか
配当株価比や平滑化した利益株価比は、指数全体のPERが今高いか安いかという同時点の関係ではなく、過去の評価倍率がその後のリターンを予測するかを問う変数です。予測変数が強く持続し、その撹乱がリターンと強く相関するとき、通常のt検定は帰無仮説を棄却しすぎることがあります。この歪みを補正した検定では、予測可能性はどう判定されるのでしょうか。
どうやって調べたのか
米国の年次・四半期・月次で、将来の超過リターンを一期前の予測変数へ回帰します。対象はCRSPのNYSE/AMEX時価加重指数と、平滑化利益株価比に用いるS&P500です。期間は抄録に無く、到達全文の導入と第4節の1926–2002年を代用しました。予測変数の最大自己回帰根の信頼区間で通常のt検定が使えるかを事前検定し、使えない場合はBonferroniのQ検定で予測係数を判定します。
何が分かったのか
抄録では、通常のt検定は配当株価比と平滑化した利益株価比では使えないが、提案した検定では予測の証拠があると述べています。到達全文では、1926–2002年で平滑化した利益株価比は年次・四半期・月次のいずれでも予測を支持し、配当株価比は年次では支持、四半期と月次では帰無を棄却できないと報告しています。短期金利と長短スプレッドでは通常のt検定が使え、予測の証拠もあると抄録は述べています。
この結果をどう読めばよいか
観測しているのは評価倍率の時系列予測回帰であり、ある時点の指数PERが高いから株価が同時に高い・安いといった同時点相関ではありません。予測可能性は変数と頻度で分かれ、費用を差し引いた売買成績や日本市場の指数は検証していません。1952年以降では配当株価比の判定が、自己回帰根を1以下と置くかどうかに依存すると本文は述べています。
- 対象市場
- 米国
- 標本期間
- 1926
〜2002 - 対象銘柄群
- CRSPのNYSE/AMEX時価加重指数の超過リターンと対数配当株価比、S&P500の平滑化(過去10年)利益株価比。年次・四半期・月次。期間は抄録に無く、到達全文の導入と第4節の1926–2002年を代用した。金利変数(短期金利・長短スプレッド)は1952–2002年の副標本。年次S&P500は1871–2002年の系列も用いる。
- 観測頻度
- monthly
- 再現性
- 未評価持続性に頑健な予測検定の独立標本での再現は、本レコードでは評価していない。
- 日本市場での有効性
- 未評価標本は米国指数の時系列であり、日本市場の評価倍率や指数PERへの適用は本レコードでは評価していない。
観測結果
通常のt検定の適用範囲
配当株価比と平滑化した利益株価比では、通常のt検定による推論が成立しないと判定した。短期金利と長短スプレッドでは通常のt検定が使えると判定した。。
効果量未掲載(not_reported)
抄録の定性結果。持続性と撹乱相関が高いときの過大棄却が理由。効果量は収録していない。
評価倍率の予測可能性
提案した検定では、平滑化した利益株価比は年次・四半期・月次で予測を支持し、配当株価比は年次では支持、四半期と月次では帰無を棄却できなかった。。
効果量未掲載(not_reported)
頻度別の分かれは到達全文の導入と第4.3節。抄録は予測の証拠があると述べるが頻度は書いていない。
金利変数の予測可能性
短期金利と長短スプレッドでも予測の証拠があり、これらでは通常のt検定による推論が使えると報告した。。
効果量未掲載(not_reported)
抄録の定性結果。本文は1952–2002年の副標本。数値の効果量は抄録に無い。
従来の片側t検定の有限標本棄却率
名目5%の片側t検定が、持続性が高く撹乱相関が大きいときに実際に棄却する割合。
効果量27.2 %(観測数250、ρ=0.992、δ=-0.95)(not_reported)
到達全文第3.6節・表3のモンテカルロ。市場リターンの効果量ではなく、検定のサイズ歪みの一例。
効果量は原典の掲載値です。当サイトが再計算したものではなく、将来のリターンを示すものでもありません。
追試の記録
この結果を追試した研究として、当サイトが台帳に持っているレコードです。
- 既報アノマリーの横断再現であり、本論文の予測検定の追試ではない。分野の文脈参照に留める。 関連研究のレコードを見る
「独立研究」は原典と著者が重ならない研究、「同一著者」は原典の著者を含む研究です。追試の件数は網羅ではありません。
限界
原典の設計上、この結果をそのまま一般化できない条件です。
原典と利用条件
- 出版社ページ(DOI。Journal of Financial Economics 81巻1号 27-60頁)https://doi.org/10.1016/j.jfineco.2005.05.008
- 掲載誌体裁の著者配布PDF(University of Houston講義資料)https://www.bauer.uh.edu/rsusmel/phd/Campbell-Yogo_2006_JFE.pdf
- ペンシルベニア大学リポジトリ(2005年9月草稿)https://repository.upenn.edu/handle/20.500.14332/34484