既報の株式アノマリーは共通手順でも有意になるか
Replicating Anomalies
Kewei Hou、Chen Xue、Lu Zhang(2020)『The Review of Financial Studies』
ひとことで言うと
447件中286件、64%が通常の5%基準で有意にならず、厳格なt値基準では380件、85%が非有意だったと示した研究です。
図で読む:この研究は何を比べたか
既報の株式アノマリーは共通手順でも有意になるか
既報の株式アノマリー447件
共通手順で再実装
同じデータ処理とポートフォリオ形成で作り直す。
通常の有意性基準
286件が有意にならなかった。
厳格なt値基準
380件が有意にならなかった。
再現した候補
残った候補も元の報告より効果量が小さい。
利益への距離
- 観測された差
-
確認された
研究標本内で報告された方向です。
- 取引費用
-
未確認
売買費用を引いた利益は本レコードで未確認です。
- 再現性
-
一部のみ
再検証に関する結果ですが、条件や効果量に限界があります。
- 日本市場
-
未確認
日本市場での成立は検証していません。
研究で観測された差は、そのまま得られる利益ではありません。4つの関門はそれぞれ独立に読んでください。
この研究を読み解く
何を知りたかったのか
過去の論文が報告した多数のリターン予測変数を、同じデータ処理、ポートフォリオ形成、有意性基準で作り直したとき、どれだけ再現し、効果量が原報告より小さくなるかを調べます。
どうやって調べたのか
1967~2014年のCRSP・Compustat銘柄から金融業と負の簿価企業を除き、出版最終版の447変数を統一実装します。NYSE基準の区分と時価加重で小型株の影響を抑え、通常基準と厳格基準を比べます。
何が分かったのか
447件中286件、64%が通常の5%基準で有意にならず、厳格なt値基準では380件、85%が非有意でした。再現した価格モメンタムなども、元の論文で報告された効果量より小さいと示します。
この結果をどう読めばよいか
非再現は「現象が全市場で存在しない」ことではなく、このデータと統一手順で基準を超えなかったという判定です。working-paper版の452件統計と出版版447件を混ぜず、実装差と経済的重要性も分けて読む必要があります。
- 対象市場
- 米国
- 標本期間
- 1967-01
〜2014-12 - 対象銘柄群
- 米国CRSP・Compustat収録銘柄(金融業と簿価が負の企業を除外)
- 観測頻度
- monthly
- 再現性
- 結果混在個別アノマリーでは再現と非再現が混在するため、分野全体の状態をmixedとする。
- 日本市場での有効性
- 未評価日本市場での有効性は評価していない。
観測結果
通常の有意水準による分野全体の再現結果
既報アノマリー447件のうち統一実装で有意にならなかった比率。
効果量286 件(447件中、64%)(risk_adjusted)
447件中286件(64%)が通常の有意水準で非有意だった。
t値3以上を基準とした分野全体の再現結果
既報アノマリー447件のうちt値3以上にならなかった比率。
効果量380 件(447件中、85%)(risk_adjusted)
t値3以上を再現基準にすると447件中380件(85%)が非有意だった。
効果量は原典の掲載値です。当サイトが再計算したものではなく、将来のリターンを示すものでもありません。
追試の記録
この結果を追試した研究として、当サイトが台帳に持っているレコードです。
- 独立研究者の統一実装で元のモメンタム効果は米国標本で有意性を再現したが効果量は縮小した。時間減衰とは断定しない。 関連研究のレコードを見る
「独立研究」は原典と著者が重ならない研究、「同一著者」は原典の著者を含む研究です。追試の件数は網羅ではありません。
限界
原典の設計上、この結果をそのまま一般化できない条件です。
原典と利用条件
- 出版社ページ(DOI)https://doi.org/10.1093/rfs/hhy131
- NBER Working Paperhttps://www.nber.org/papers/w23394