個別株の平均リターンは、ベータではなくサイズと簿価時価比率で分かれた
The Cross-Section of Expected Stock Returns
Eugene F. Fama、Kenneth R. French(1992)『The Journal of Finance』
出版社ページ(DOI。The Journal of Finance 47巻2号 427-465頁) 掲載誌体裁の著者配布PDF
ひとことで言うと
米国個別株では市場ベータは平均リターンを説明せず、サイズと簿価時価比率が説明すると報告した研究です。指数全体のPER時系列とは別の問いです。
図で読む:この研究は何を比べたか
ベータは平坦で、サイズと簿価時価が残る
市場ベータ
サイズと無関係な変動を残すと関係は平坦
個別株の平均リターンを何で分けるか
サイズと簿価時価比率
レバレッジと利益株価比率の役割も吸収
ベータは説明せず、サイズとBE/MEが説明する
利益への距離
- 観測された差
-
確認された
1963–1990年の米国個別株で、ベータ平坦とサイズ・簿価時価の差が報告されている。
- 取引費用
-
未確認
取引費用を差し引いた後の成績は検証していない。
- 再現性
-
未確認
独立標本での追試は本レコードでは評価していない。
- 日本市場
-
未確認
日本市場の個別株や指数PERは検証していない。
研究で観測された差は、そのまま得られる利益ではありません。4つの関門はそれぞれ独立に読んでください。
この研究を読み解く
何を知りたかったのか
個別株の平均リターンの違いは、市場ベータだけで足りるのでしょうか。サイズ、レバレッジ、簿価時価比率、利益株価比率は、ベータとは別に平均リターンを分けるのでしょうか。これは指数全体のPERが時間とともに将来リターンを予測するかという時系列の問いではなく、同じ時点の銘柄間の違いを問うものです。
どうやって調べたのか
NYSE・AMEX・NASDAQの非金融業について、CRSPとCOMPUSTATを突合します。期間は抄録に無く、到達全文のデータ節から1963年7月から1990年12月を代用します。毎年6月にNYSE基準でサイズ十分位を作り、事前ベータでさらに十分割してサイズと無関係なベータ変動を残します。翌年7月から翌々年6月の個別株リターンを、Fama-MacBethの月次クロスセクション回帰で説明します。
何が分かったのか
サイズだけで分けると、最小群の月次平均リターンは1.64%、最大群は0.90%でした。事前ベータだけで分けると、両極端の月次平均は1.20%と1.18%でほぼ同じでした。ベータだけのFama-MacBeth回帰の平均傾きは月次0.15%、標準誤差の0.46倍です。サイズの対数は平均傾き-0.15%(t=-2.58)、簿価時価比率の対数は0.50(t=5.71)です。サイズと簿価時価比率を合わせると、レバレッジと利益株価比率の役割も吸収されると本文は述べています。
この結果をどう読めばよいか
ここでいう簿価時価比率や利益株価比率は、個別株を同じ時点で比べるクロスセクションの変数です。指数全体のPERが今高いか安いか、その後の指数リターンを予測するかという時系列の問いとは別です。報告は1963–1990年の米国非金融株の費用控除前の平均リターンであり、日本市場や売買規則の成績は検証していません。
- 対象市場
- 米国
- 標本期間
- 1963-07
〜1990-12 - 対象銘柄群
- NYSE・AMEX・NASDAQの非金融業。CRSPリターンとCOMPUSTAT年次財務の交差。期間は抄録に無く、到達全文の導入とデータ節の1963年7月–1990年12月を代用した。会計変数は前年12月の時価と突き合わせ、リターンは翌年7月から翌々年6月。サイズは当年6月の時価総額。
- 観測頻度
- monthly
- 再現性
- 未評価サイズと簿価時価比率が平均リターンを分けるという報告の独立標本での再現は、本レコードでは評価していない。
- 日本市場での有効性
- 未評価標本は米国個別株のクロスセクションであり、日本市場や指数全体のPER時系列への適用は本レコードでは評価していない。
観測結果
サイズだけで分けた月次平均リターン
時価総額の最小群と最大群の月次平均リターン。
効果量1.64 %(月次、最小群。最大群は0.90%)(gross)
到達全文第II節Aと表II。最小群1.64%、最大群0.90%。費用控除前。抄録にはこの数値は無い。
事前ベータだけで分けた両極端の月次平均
事前ベータの最低群と最高群の月次平均リターン。
効果量1.2 %(月次、最低群。最高群は1.18%)(gross)
到達全文第II節Aと表II。1Aが1.20%、10Bが1.18%でほぼ同じ。抄録には数値は無い。
ベータだけのFama-MacBeth傾き
個別株リターンを市場ベータだけへ回帰した月次傾きの時系列平均。
効果量0.15 %(月次。標準誤差の0.46倍)(gross)
到達全文第II節Bと表III。ベータ単独ではゼロから遠いとは言えない。抄録は関係が平坦と述べ、数値は本文。
サイズと簿価時価比率の役割
サイズの対数と簿価時価比率の対数が、レバレッジと利益株価比率が担っていた平均リターンの違いも吸収した。。
効果量未掲載(not_reported)
抄録と到達全文の導入の定性結果。表IIIでは簿価時価比率の対数の単独傾きは0.50(t=5.71)。
効果量は原典の掲載値です。当サイトが再計算したものではなく、将来のリターンを示すものでもありません。
追試の記録
この結果を追試した研究として、当サイトが台帳に持っているレコードです。
- 既報アノマリーの横断再現であり、本論文のサイズ・簿価時価の追試ではない。分野の文脈参照に留める。 関連研究のレコードを見る
- バリュー×グラマーと決算後ドリフトの交差であり、本論文の追試ではない。分野の文脈参照に留める。 関連研究のレコードを見る
「独立研究」は原典と著者が重ならない研究、「同一著者」は原典の著者を含む研究です。追試の件数は網羅ではありません。
限界
原典の設計上、この結果をそのまま一般化できない条件です。
原典と利用条件
- 出版社ページ(DOI。The Journal of Finance 47巻2号 427-465頁)https://doi.org/10.1111/j.1540-6261.1992.tb04398.x
- 掲載誌体裁の著者配布PDFhttps://www.efalken.com/pdfs/famafrench1992.pdf