配当・利益成長率で推計した期待株式プレミアムはなぜ実現収益より低かったか
The Equity Premium
Eugene F. Fama、Kenneth R. French(2002)『The Journal of Finance』
ひとことで言うと
配当・利益成長率から推計した期待株式プレミアムは、実現した平均株式収益率よりかなり低かったと報告した研究です。
図で読む:この研究は何を比べたか
推計した期待プレミアムは、実現したプレミアムより低かった
配当・利益成長率からの推計
配当成長モデル2.55%、利益成長モデル4.32%
期待株式プレミアムをどう測るか(1951–2000年平均)
平均株式収益率から計算した実現値
実現プレミアム7.43%
実現値は推計値を大きく上回る
利益への距離
- 観測された差
-
確認された
1951–2000年の米国株式市場で推計プレミアムと実現プレミアムの差を報告している。
- 取引費用
-
未確認
取引費用や税を控除した投資成果は検証していない。
- 再現性
-
未確認
独立標本での追試は本レコードでは評価していない。
- 日本市場
-
未確認
日本市場は対象外。
研究で観測された差は、そのまま得られる利益ではありません。4つの関門はそれぞれ独立に読んでください。
この研究を読み解く
何を知りたかったのか
株式の期待収益率が安全資産をどれだけ上回るかという株式プレミアムを、過去の平均株式収益率でそのまま測ってよいのでしょうか。配当や利益の成長率という、より基礎的な情報から推計した期待プレミアムと、実際に実現した平均株式収益率は一致するのかを問います。
どうやって調べたのか
米国株式市場について、1951年から2000年の配当成長率と利益成長率をそれぞれ将来の資本利得率の代理変数として用い、期待株式プレミアムを2通りの方法で推計します。この推計値を、同期間の平均株式収益率から計算した実現プレミアムと比較します。
何が分かったのか
配当成長モデルによる推計は2.55%、利益成長モデルによる推計は4.32%でした。一方、同期間の平均株式収益率から計算した実現プレミアムは7.43%で、いずれの推計値も大きく上回りました。この差は、要求収益率(割引率)が低下したことによる予期しない資本利得に起因すると論じています。
この結果をどう読めばよいか
過去半世紀の平均株式収益率をそのまま将来の期待プレミアムとみなすと、より基礎的な配当・利益成長率から推計した値より高く出る可能性を示す研究です。個別銘柄の選別や取引タイミング、費用控除後の投資成果を検証したものではなく、市場全体の集計データに基づく期待収益率の測り方についての研究です。日本市場は対象外です。
- 対象市場
- 米国
- 標本期間
- 1951〜2000
- 対象銘柄群
- 米国株式市場の配当成長率・利益成長率と平均株式収益率。到達した抄録に具体的な指数名やデータ源の記載はない。
- 観測頻度
- annual
- 再現性
- 未評価配当・利益成長モデルによる期待株式プレミアム推計の独立標本での追試は、本レコードでは評価していない。
- 日本市場での有効性
- 未評価米国株式市場の集計データのみを対象とし、日本市場の標本や指数は検証していない。
観測結果
配当成長モデルによる期待株式プレミアム
配当成長率を将来の資本利得率の代理として用いて推計した期待株式プレミアム(1951–2000年平均)。
効果量2.55 %(年率)(gross)
到達した抄録(RePEc/EconPapers、Semantic Scholar経由の記載が一致)に記載の推計値。
利益成長モデルによる期待株式プレミアム
利益成長率を将来の資本利得率の代理として用いて推計した期待株式プレミアム(1951–2000年平均)。
効果量4.32 %(年率)(gross)
到達した抄録に記載の推計値。配当成長モデルとは別の代理変数を用いた推計。
実現した平均株式収益率
同期間の平均株式収益率から計算した実現株式プレミアム。
効果量7.43 %(年率)(gross)
到達した抄録に記載の実現値。配当・利益成長モデルの推計値2.55%・4.32%を大きく上回る。
推計と実現の乖離の説明
推計プレミアムが実現プレミアムより低い理由を、要求収益率(割引率)の低下による予期しない資本利得に帰した。
効果量未掲載(not_reported)
到達した抄録の定性的な結論部分。効果量の分解や検定統計量は抄録に記載がない。
効果量は原典の掲載値です。当サイトが再計算したものではなく、将来のリターンを示すものでもありません。
追試の記録
この結果を追試した研究として、当サイトが台帳に持っているレコードです。
- 同じ株式プレミアムを扱うが、Mehra-Prescottは一般均衡モデルの制約との食い違いを問い、本論文は配当・利益成長率からの期待値推計と実現値の乖離を問う。本論文の追試ではなく分野の文脈参照に留める。 関連研究のレコードを見る
「独立研究」は原典と著者が重ならない研究、「同一著者」は原典の著者を含む研究です。追試の件数は網羅ではありません。
限界
原典の設計上、この結果をそのまま一般化できない条件です。
原典と利用条件
- 出版社ページ(DOI。Wiley本体は403で本文取得不可)https://doi.org/10.1111/1540-6261.00437
- RePEc/EconPapers抄録ページhttps://econpapers.repec.org/RePEc:bla:jfinan:v:57:y:2002:i:2:p:637-659