個人が逆張りで受け止めた後に、短期のリターンが反転して現れる
Individual Investor Trading and Stock Returns
Ron Kaniel、Gideon Saar、Sheridan Titman(2008)『Journal of Finance』
出版社ページ(DOI) SSRNワーキングペーパー版(DOI) 著者ページ(Gideon Saar, Cornell SC Johnson)
ひとことで言うと
NYSEの個人投資家売買データを用い、個人の集中的な買いの後に正、売りの後に負の超過リターンが現れると報告した研究。
図で読む:この研究は何を比べたか
個人が逆張りで受け止め、その後に反転が現れる
- 機関投資家が即時性を求める今すぐ売買を成立させたい需要が生じ、価格に一方向の圧力がかかる。
- 個人が反対側に立つ個人は下落の後に買い、上昇の後に売る逆張りの傾向を示す。
- 価格の譲歩が生じるリスク回避的な個人に反対側を取ってもらうため、価格の譲歩が必要になる。
- その後にリターンが反転する個人の集中的な買いの後に正、売りの後に負の超過リターンが観測される。
利益への距離
- 観測された差
-
確認された
個人の集中的な売買の後に、向きの異なる超過リターンが観測されている。
- 取引費用
-
未確認
手数料やスプレッドを差し引いた後の評価は、確認した抄録に示されていない。
- 再現性
-
未確認
別の取引所・期間・投資家分類での再現は本レコードでは評価していない。
- 日本市場
-
未確認
標本は米国のNYSE株であり、日本市場は検証されていない。
研究で観測された差は、そのまま得られる利益ではありません。4つの関門はそれぞれ独立に読んでください。
この研究を読み解く
何を知りたかったのか
短期の値動きが反転するとき、その反対側で誰が売買しているのでしょうか。個人投資家は判断を誤りやすい存在として語られることが多い一方、下げた銘柄を買い上げた銘柄を売る逆張りの傾向も知られています。個人の売買は、その後のリターンを予測できるのでしょうか。
どうやって調べたのか
NYSEが提供したConsolidated Equity Audit Trail Data(CAUD)から、NYSE上場の国内普通株について、個人投資家の執行済み買い注文と売り注文の日次売買高を取り出し、正味の個人売買という指標を作ります。この指標と過去リターン、出来高で独立にソートしたポートフォリオを組み、さらに週次リターンを過去リターン・出来高・正味の個人売買に回帰して、どの変数が将来リターンを説明するかを比べます。
何が分かったのか
個人は価格が下げた後に買い、上げた後に売る傾向が確認されました。そのうえで、個人が集中的に買った週の後の1か月には正の超過リターン、集中的に売った後には負の超過リターンが観測されています。この予測力は、過去リターンや出来高で説明し尽くされるものではなく、多変量回帰でも独立した説明力を保ちました。効果は流動性の低い銘柄でより大きいと報告されています。
この結果をどう読めばよいか
個人が優れた情報を持つという話ではなく、即時性を求める機関投資家に対して個人が反対側に立ち、その価格譲歩が後の反転として現れるという流動性供給の解釈が提示されています。超過リターンは市場調整後の値であり、売買を実行したときの手数料やスプレッドを差し引いた後に何が残るかは、この論文の抄録では扱われていません。標本は2000年から2003年のNYSE株です。
- 対象市場
- 米国
- 標本期間
- 2000-01
〜2003-12 - 対象銘柄群
- NYSE上場の国内普通株。個人投資家の売買はNYSEのConsolidated Equity Audit Trail Data(CAUD)に基づく。抄録に標本期間の記載はなく、期間は出版版本文の標本記述による。
- 観測頻度
- 日次・週次
- 再現性
- 未評価NYSEが提供した個人投資家の売買データという固有の標本に依存しており、別の取引所・期間・投資家分類での再現は本レコードでは評価していない。
- 日本市場での有効性
- 未評価標本はNYSE上場の米国株であり、個人投資家の位置付けが異なる日本市場での成立は評価していない。
観測結果
個人の売買と過去リターンの関係
個人は前月の株価下落の後に買い、上昇の後に売る傾向がある。。
効果量未掲載(not_reported)
抄録は向きのみを述べ、水準を数値で示していない。効果量は原典の表定義を参照。
個人の売買と将来リターンの関係
個人による集中的な買いの後の1か月に正の超過リターン、集中的な売りの後に負の超過リターンが観測され、これは既知の過去リターン効果や出来高効果とは別のものだと示している。。
効果量未掲載(gross)
抄録に超過リターンの数値の記載はなく、向きのみを収録する。抄録は市場調整後の超過リターンを述べており、取引費用や税を差し引いた後の評価は示していない。効果量は原典の表定義を参照。
著者らの解釈
これらのパターンは、リスク回避的な個人が、即時性を求める機関投資家の需要に対して流動性を供給しているという見方と整合的だと述べている。。
効果量未掲載(not_reported)
著者らの解釈であり効果量ではない。競合する説明との比較は原典本文を参照。
効果量は原典の掲載値です。当サイトが再計算したものではなく、将来のリターンを示すものでもありません。
追試の記録
この結果を追試した研究として、当サイトが台帳に持っているレコードです。
- 短期の反転を流動性の供給と価格圧力の観点から検証した関連研究であり、本研究のNYSE個人投資家データの追試ではない。 関連研究のレコードを見る
- 非流動性の測り方とリターンの関係を扱う先行研究であり、本研究の観測の追試ではない。 関連研究のレコードを見る
「独立研究」は原典と著者が重ならない研究、「同一著者」は原典の著者を含む研究です。追試の件数は網羅ではありません。
限界
原典の設計上、この結果をそのまま一般化できない条件です。
原典と利用条件
- 出版社ページ(DOI)https://doi.org/10.1111/j.1540-6261.2008.01316.x
- SSRNワーキングペーパー版(DOI)https://doi.org/10.2139/ssrn.600084
- 著者ページ(Gideon Saar, Cornell SC Johnson)https://business.cornell.edu/faculty-research/faculty/gs25/