韓国株式市場のデイトレードは、手数料を含めると日次平均で負だった
How Profitable is Day-trading?: A Study on Day-trading in Korean Stock Market
Eun Jung Lee、Kyung Suh Park、Ha Sung Jang(2007)『Korean Journal of Financial Studies』
出版社ページ(Korean Journal of Financial Studies 36巻3号 351-385頁) 出版社が公開する全文PDF
ひとことで言うと
韓国証券取引所の全投資家からデイトレーダーを日ごとに識別し、日次平均リターンが手数料込みで-0.81%だったと報告した研究。
図で読む:この研究は何を比べたか
手数料を含めると、日次平均リターンはさらに下がる
手数料を含める前
日次平均リターンは-0.39%だった。
取引手数料を含める
手数料を含めた後
日次平均リターンは-0.81%へ低下した。市場指数と手数料で調整した平均超過リターンも-0.66%だった。
利益への距離
- 観測された差
-
支持されない
日次平均リターンは手数料を含める前で-0.39%、含めた後で-0.81%だった。
- 取引費用
-
支持されない
手数料を含めると日次平均リターンはさらに低下し、負の水準にとどまった。
- 再現性
-
未確認
同じ定義と手法を別市場・別期間へ適用した独立の追試は評価していない。
- 日本市場
-
未確認
標本は韓国の個別株であり、日本市場は検証されていない。
研究で観測された差は、そのまま得られる利益ではありません。4つの関門はそれぞれ独立に読んでください。
この研究を読み解く
何を知りたかったのか
デイトレードは売買を繰り返すため手数料の負担が重く、それを上回るリターンがなければ手元に残りません。当時の韓国ではデイトレードが売買代金の相当部分を占めていました。では実際のデイトレーダーの日次リターンは平均でどれくらいで、手数料や市場全体の動きを調整すると何が残るのでしょうか。
どうやって調べたのか
2003年2月3日から5月30日までに韓国証券取引所で売買した全投資家の日中データを、口座単位の投資家識別情報とともに使います。同一銘柄を同日中に反復売買し、在庫を残さずに引けたケースだけをデイトレードと定義し、取引日ごとにデイトレーダーを識別します。そのうえで日次の損益とリターンを算出し、手数料を含める前後、および市場指数と手数料で調整した超過リターンを比べます。取引規模、取引時間の長さ、取引頻度との関係も調べます。
何が分かったのか
デイトレーダーの日次平均リターンは-0.39%でした。取引手数料を含めると-0.81%へ低下し、市場指数リターンと手数料で調整した平均超過リターンも-0.66%と負でした。一方で、期間中に正の超過リターンを得たデイトレーダーは42.9%存在しましたが、著者らは期間を通じて継続的に正の超過リターンを得た個人がいるかまでは確認できなかったと述べています。収益性は取引規模、取引時間の長さ、取引頻度と負の相関を示しました。
この結果をどう読めばよいか
平均では手数料を含めた後に負のリターンが残った一方、個人差は大きく、その差が実力によるものかは判定されていないという整理です。標本は2003年2月から5月という4か月間の韓国株式市場に限られ、日本市場や指数先物、レバレッジ型商品は対象に含まれていません。当時の韓国の手数料水準や取引制度も、現在の日本とは異なります。
- 対象市場
- その他
- 標本期間
- 2003-02
〜2003-05 - 対象銘柄群
- 韓国証券取引所(Korea Stock Exchange)で2003年2月3日から5月30日までに売買した全投資家。口座単位の投資家識別情報を含む日中データを用い、同一銘柄を同日中に反復売買して在庫を残さず終えた投資家をデイトレーダーと定義している。
- 観測頻度
- daily
- 再現性
- 未評価2003年2月から5月という4か月間の韓国株式市場という単一標本の結果であり、同じ定義と手法を別市場・別期間へ適用した独立の追試は本レコードでは評価していない。
- 日本市場での有効性
- 未評価標本は韓国証券取引所の個別株取引であり、日本市場や日経225先物などでの成立は評価していない。
観測結果
デイトレーダーの日次平均リターン
手数料を含める前の日次平均リターン。
効果量-0.39 %(gross)
抄録の記載値。1日あたりの平均であり、年率換算などの再計算は行っていない。
手数料を含めた日次平均リターン
取引手数料を含めた後の日次平均リターン。
効果量-0.81 %(net_of_costs)
抄録の記載値。手数料を含めることで、控除前の水準からさらに低下している。
市場指数と手数料で調整した日次平均超過リターン
市場指数リターンと証券会社手数料で調整した平均アブノーマルリターン。
効果量-0.66 %(risk_adjusted)
抄録は市場指数リターンと証券会社手数料で調整した平均アブノーマルリターンとして報告している。調整方法の詳細は原典本文を参照。
正の超過リターンを得た個人の割合
期間中に正のアブノーマルリターンを得たデイトレーダーの割合。
効果量42.9 %(risk_adjusted)
抄録の記載値。著者らは、期間を通じて継続的に正のアブノーマルリターンを得たデイトレーダーがいるかは確認できなかったと述べている。
収益性と取引特性の関係
デイトレードの収益性は、取引規模、1日の取引時間の長さ、取引頻度のいずれとも負の相関を示した。。
効果量未掲載(not_reported)
相関の大きさは抄録に示されておらず、向きのみを収録する。著者らは市場インパクトコストや引け間際の手仕舞い圧力を理由として推測している。
効果量は原典の掲載値です。当サイトが再計算したものではなく、将来のリターンを示すものでもありません。
追試の記録
この結果を追試した研究として、当サイトが台帳に持っているレコードです。
- ブラジルの指数先物のデイトレーダーを対象に継続日数別の損益を分析した研究であり、本研究の韓国株式標本の追試ではない。 関連研究のレコードを見る
「独立研究」は原典と著者が重ならない研究、「同一著者」は原典の著者を含む研究です。追試の件数は網羅ではありません。
限界
原典の設計上、この結果をそのまま一般化できない条件です。
原典と利用条件
- 出版社ページ(Korean Journal of Financial Studies 36巻3号 351-385頁)https://www.e-kjfs.org/journal/view.php?number=491
- 出版社が公開する全文PDFhttps://www.e-kjfs.org/upload/pdf/kjfs-2007-36-3-351.pdf