結論

三か国の標本で方向は揃っています。台湾では典型的な半年間で10人中8人超が損失を出し、 ブラジルでは300日超続けた個人の97%が損失に終わり、費用控除後の正の超過リターンを 継続して得られたのは1%未満だったと報告されています。

Barber, Lee, Liu & Odean (2004) は、1995年から1999年の台湾証券取引所の全取引記録から 個人投資家のデイトレードを抽出し、典型的な半年間でデイトレーダーの10人中8人超が損失を 出したと報告しています。デイトレードの多い層は手数料と取引税を差し引く前の粗利益を 得ていましたが、その利益は取引費用を賄うには足りませんでした。

同じ著者らが標本を1992年から2006年へ延ばした Barber, Lee, Liu & Odean (2014) は、 ある年のデイトレード成績で順位付けした上位500人が翌年に手数料控除前61.3、控除後37.9 ベーシスポイントの日次リターンを得た一方、下位に位置した層は控除前-11.5、控除後-28.9 ベーシスポイントだったと報告しています。腕前の差自体は大きく開いています。

ここで、二つの異なる指標を取り違えないことが重要です。同研究の本文序論は、平均的な年に 年間60万台湾ドル超のデイトレードを行った約27.7万人のうち、およそ20%が手数料と取引税の 控除後に正の超過リターンを得たと記しています(著者らはこのうち一部は偶然によるものと 述べています)。これは「単年で黒字だった割合」です。これに対し、手数料控除後の正の 超過リターンを予測可能かつ信頼できる形で、翌年も継続して得られたのは全体の1%未満でした。 単年の黒字と、継続する優位は別の指標です。

Chague, De-Losso & Giovannetti (2020) は、ブラジルのミニIbovespa指数先物で2013年から 2015年にデイトレードを始めた19,646人を追跡し、300日を超えて継続した個人の97%が損失に 終わったと報告しています。ブラジルの最低賃金を上回る収入を得たのは1.1%、銀行窓口係の 初任給を上回ったのは0.5%であり、継続日数が長くなるほど日次損益が改善する傾向は 見つかっていません。

Lee, Park & Jang (2007) は、2003年2月から5月の韓国証券取引所の全投資家の日中データから デイトレーダーを日ごとに識別し、日次平均リターンが手数料を含める前で-0.39%、含めた後で -0.81%、市場指数と手数料で調整した平均超過リターンも-0.66%だったと報告しています。 期間中に正の超過リターンを得たデイトレーダーは42.9%存在しましたが、著者らは期間を 通じて継続的に正の超過リターンを得た個人がいるかまでは確認できなかったと述べています。

  • 台湾、ブラジル、韓国という三つの標本で、大多数が費用控除後に損失側へ寄るという方向は揃っている
  • 「単年で黒字だった割合」と「翌年も継続して費用控除後の正の超過リターンを得られた割合」は別の指標であり、台湾の標本では前者がおよそ20%、後者が1%未満と報告されている
  • 上位層に持続性があるという報告も同時に存在する。ただし台湾2004年の1日あたり62ベーシスポイントは買った銘柄と売った銘柄のリターン差であり、個々の投資家の実現損益そのものではない
  • ブラジルの標本では、継続日数が長くなるほど成績が改善するという傾向は見つかっていない

日本市場のデイトレード(日経225先物、レバレッジ型ETF、信用取引)を標本として同じ集計を 行った研究は、研究検証台帳に収録されていません。ここに挙げた比率は、いずれも台湾・ ブラジル・韓国の制度と費用水準のもとで観測された値です。

参照した研究

限界

標本は台湾証券取引所、ブラジルのミニIbovespa指数先物、韓国証券取引所であり、日本市場は いずれの研究でも検証の対象に含まれていない。手数料・取引税の水準や値幅制限などの制度も 日本とは異なる。ブラジルの損益は取引所・証券会社の手数料を控除した後の値だが、所得税や 取引ツール・講座の費用は含まれていない。韓国の標本は2003年2月から5月の4か月間に限られる。 台湾の2004年と2014年の研究は同一著者・重複標本であり、独立した研究者による追試は 本台帳では評価していない。