結論

個別株の横断では検証されています。東証株で簿価時価やキャッシュフロー利回りと期待リターンの 正の関係が報告され、日本個別株のバリュー高マイナス低は年率12.0パーセントという記録もあります。 日経平均PERの時系列は、台帳では薄いです。

日本市場で「PERが低いほどその後のリターンが高い」と言えるかは、 個別株の横断と、指数全体の時系列で答えが分かれます。台帳にあるのは、 主に前者です。

Chan, Hamao & Lakonishok (1991) は、1971年から1988年の東証個別株で、 益回り・サイズ・簿価時価・キャッシュフロー利回りと期待リターンのあいだに 有意な関係があり、簿価時価とキャッシュフロー利回りの正の影響が最も強いと 報告しています。

Daniel, Titman & Wei (2001) は、1975年10月から1997年12月の東証両部普通株で、 規模を固定した簿価時価効果を月0.74パーセントと報告しています。 三因子モデルは棄却され、特性モデルは棄却されなかった、という整理です。 測っているのは銘柄特性であり、指数PERではありません。

Asness, Moskowitz & Pedersen (2013) は、1974年1月から2011年7月の日本個別株で、 簿価時価比3分位の高マイナス低を年率12.0パーセント(t値4.31)と報告しています。 同じ標本のモメンタムは年率1.7パーセント(t値0.57)で、通常の有意水準には届きません。 対象は時価総額上位のおおむね26パーセントに限られ、取引費用控除前です。

Liang (2019) は、日本株の配当利回り・キャッシュフロー利回り・鉱工業生産を 系統要因として扱い、鉱工業生産を加えるとバリューとサイズのプレミアムは 非有意になったと抄録が述べます。到達した抄録に標本期間はなく、 日経平均PERの使用も記されていません。

  • 東証個別株の横断では、簿価時価やキャッシュフロー利回りの関係が報告されている
  • 日本個別株のバリュー高マイナス低は、年率12.0パーセントという記録がある
  • 日経平均PERとその後の日経平均リターンを直接測ったレコードは、台帳にない

日本で個別株バリューが観測されていることと、日経平均PERで指数の先行きが 読めることとは、同じ結果ではありません。

参照した研究

限界

日本の検証は個別株クロスセクションが中心で、日経平均PERの時系列予測は未収録である。 Chan et al. は1988年まで、Daniel et al. は1997年まで、Asness et al. は2011年までで、 その後の会計・金融政策・指数構成の変化は別評価である。Asness et al. の12.0パーセントは 費用控除前であり、対象は時価総額上位層に限る。