結論

結果は割れています。長期・標本内では予測の証拠が報告される一方、標本外では歴史平均を 上回らないと報告した研究があります。同じ変数でも、標本の切り方で向きが変わります。

市場PERが「高いから下がる」「低いから上がる」という読みは、研究の側では 時系列の予測回帰として扱われます。同時点の相関とは別の問いです。

Campbell & Shiller (1988) は、株価の超過ボラティリティが長期リターンの 予測可能性を直接含意すると論じています。Campbell & Yogo (2006) は、 持続性に頑健な検定で、平滑化した利益株価比が年次・四半期・月次で予測を 支持したと報告しています。配当株価比は年次では支持、四半期と月次では 帰無を棄却できなかったと述べています。

一方、Goyal & Welch (2008) は、配当比率や金利など既報の予測変数を同じ手順で 再検討し、標本内でも標本外でもこの30年は予測が弱く不安定だったと報告しています。 1975年以降に標本外で歴史平均を上回ったモデルはなかった、と本文は述べます。 1976年から2005年の配当価格比による標本外R2はマイナス15.14パーセントです。

Goyal, Welch & Zafirov (2024) は、2008年論文の17変数に加え、その後26本の 29変数を2021年末まで延長しました。新変数の3分の1超は標本内でも残らず、 揃えた仕様で標本内と標本外が残った新変数は4本だと報告しています。 同一著者グループによる延長であり、独立した追試ではありません。

  • 長期の平滑化利益株価比では、予測を支持する報告がある
  • 標本外では、歴史平均を上回らないという報告がある
  • 延長標本でも、残る変数と残らない変数が混在する

割れたまま読む必要があります。標本内の予測力と、標本外で歴史平均を上回るかは、 同じ変数でも別の判定です。

参照した研究

限界

いずれも米国の市場全体プレミアムが対象であり、日経平均と日経平均PERの時系列は 検証されていない。予測の対象期間は年次やそれより長い窓が中心で、日次の短期売買は 対象外である。取引費用控除後の成績も、タイミング運用の一部を除き報告されていない。