一つの主張を四つの問いへ分ける

SQ前日売りを評価する四つの軸
確認する内容
平均収益 満期直前の売り収益が費用反映後も正だったか
尾部損失 小さな利益の反復と低頻度の大幅損失を同時に測ったか
証拠金 売り建玉の所要額と追加差入れがいつまで残るか
日本への距離 日経225のSQ前日を直接検証したか

平均収益が正であること、統計的な異常であること、口座全体の期待値が正であることは同じ命題ではありません。

満期直前の平均収益と最悪損失

Tosi & Ziegler (2017) はS&P 500指数オプションを使い、OTMプット売りの収益が満期直前へ集中したと報告しました。取引費用を反映した満期1日前から満期までの標本では、年率換算収益6.60%、シャープレシオ0.95でした。

同じ最終1日の標準偏差は5.39%、最悪リターンはマイナス14.42%でした。 20日前から10日前までの区間より最悪損失も悪化し、満期接近とともにジャンプ・リスクが支配的になると解釈されています。平均値だけを取り出すと、この同時発生が見えません。

台帳で見る — 満期までの時点でオプション収益はどう変わるか

高い過去平均は統計的な異常か

Broadie, Chernov & Johannes (2009) は、S&P 500先物オプションの満期保有収益を非線形な損益分布のもとで再評価しました。OTMプット売りの大きな平均収益は、極端事象の少ない標本が生む不確実性を考慮すると、Black–ScholesやHestonモデルに対する統計的に有意な異常ではないと報告しています。

台帳で見る — 指数オプションの高い平均収益をどう評価したか

Bakshi & Kapadia (2003) は、デルタヘッジしたオプション買いの平均gainがゼロを下回ることを報告し、負の市場ボラティリティ・プレミアムと結びつけました。売り手側の収益は、無条件の価格の歪みではなく、ボラティリティやジャンプを引き受ける対価という読み方になります。

台帳で見る — デルタヘッジ後の損益とボラティリティ・プレミアム

日本の満期日研究が示した範囲

Karolyi (1996) は日本の指数先物・オプション満期周辺を調べました。出来高は平均より多い一方、満期前後の原資産価格の反転は0.1%未満で統計的に有意ではなく、典型的なスプレッド、手数料、市場インパクトを賄う規模ではなかったと報告しています。

台帳で見る — 日本の満期日前後の出来高・変動・価格反転

Li (2006) は日経225オプションのプット・コール・パリティを調べましたが、対象は裸売りではなく、コール、プット、原資産を組み合わせる裁定です。低コストの取引所会員を仮定しても、執行を 1分または3分遅らせると機会と利益は大幅に減り、30%以上が不採算になりました。

台帳で見る — 日経225オプションの裁定機会と執行遅延

値洗いがないことと追加証拠金がないことは別

JSCCでは、指数オプションに先物のような日々の値洗差金授受は発生しません。ただし売り手には証拠金が必要です。顧客証拠金所要額はJSCCのVaR額以上の範囲で証券会社が定め、受入額が所要額を下回れば追加差入れの対象になります。

通常の証拠金ポジション認識はSQ算出日の前営業日まで、日中・緊急証拠金はSQ日までです。さらに反対売買できない場合、SQ日の構成銘柄の始値によるギャップ、ITM建玉の自動決済が残ります。したがって、取引最終日の売り建玉について追加証拠金リスクが制度上消えるとは整理できません。

研究と制度を合わせた結論

各主張に対する確認結果
主張 確認結果
満期直前は平均収益が正 米国の一標本では支持。ただし最悪損失も悪化
高い平均収益は統計的な異常 極端事象を考慮した研究は支持しない
取引最終日は追加証拠金がない 日本の公式制度と一致しない
日経225のSQ前日売りで再現 直接検証した収録研究なし

市場、期間、オプション種別、収益率の分母、証拠金方式が異なるため、米国の数値を日経225へ移せません。

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本記事は研究と制度の一般的な紹介であり、売買推奨・投資助言ではありません。個別の証拠金所要額や追加差入れ時刻は、取引先の規定と最新の公表資料で異なります。

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